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2013年 04月 12日

ワルシャワ蜂起博物館 -その2-

ワルシャワ蜂起って、その名が示す通り、首都ワルシャワで勃発したものだから、その戦いは完全な市街戦で、
ポーランド側の戦闘形態はゲリラ戦に近い。ドイツに占領されてたポーランドに正規軍ってのはないわけだから
要するに民兵による武装蜂起だよね。これに対するドイツ軍の掃討作戦は苛烈を極めた。

この時、ワルシャワという街は完全に、メチャクチャに、コテンパンに、テッテイ的に、ブッ壊され、焼かれた。
今は復元されて世界遺産になってる旧市街の中心部もこんなアリサマだったのだ。映画「灰とダイヤモンド」にも
「美しかったワルシャワがあんな風になって、私の心の一部も死んでしまった」みたいなセリフがあったと思う。
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イ課長が行った他の東欧圏の首都、プラハとかブダペストとかと比べても、ワルシャワの街って明らかに
「歴史の面影」みたいな雰囲気が希薄なんだよ。第二次大戦以前から残ってる歴史的建造物なんて
ほとんどないはずで、あったとすれば、それは復元したものなんじゃないかなぁ?

展示物で胸がつまるのは当時の手紙だ。もちろん内容は判読不能なわけだが。
これを書いた人、受け取った人の中で、ワルシャワ蜂起を生き延びた人がどれだけいるだろうか?
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こういう「当時の資料」はもちろん、壁面や床を使った映像展示も豊富で、ワルシャワ蜂起に対する
ポーランド人の思い入れの深さが伝わる展示内容だ。場内が全体的に暗いっていうのも、この博物館の
目的に合わせたものなんだろう。
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イ課長の中ではポーランドって、第二次大戦の惨禍がことさらヒドかった国ってイメージがある。
そのイメージを裏付けるデータがないかと探したら、Wikipediaの英語版ですごい表を見つけた。
第二次大戦での戦没者数と、それが1939年の人口の何%にあたるかっていう数字の、国別の表だ。

日本の戦没者数は260万~310万人くらいとされてて、「戦没者比率」は1939年人口の3.6~4.3%。
中国の戦没者数はもっと多いけど、中国の場合、人口の母数も大きいから比率としては1.9~3.8%。
日本と同じ敗戦国・ドイツは比率がぐっと高くなって7.9~10%くらいっていう数字が載っている。

ポーランドは、と見れば、これが驚くなかれ16.1~16.7%。ドイツよりはるかに多い。
この表の中に載ってる国の中じゃポーランドの「戦没者比率」が一番多い。うーーん、やっぱり。
これはパーセンテージの比較だけど、死者数そのものでも、もちろんポーランドは日本よりはるかに多い。
100人中16人が死ぬってただごとじゃない。戦没者数が一番多いソ連よりも、この比率は高い。
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ポーランドにおける第二次大戦の記憶、ないし史観って、どんなものなんだろうか?
「悲惨な戦争を繰り返してはナラヌ」的な、普通の“教訓”とはちょっと違ってて当然という気がするんだよ。
その違いを知ること・・それが、イ課長のダークなポーランド旅行のテーマだったのだ・・・って、ウソだけど(笑)。

歩き疲れたから、中庭に出てちょっと休んだ。ここに大きな壁と鐘がある。「鎮魂の鐘」なんだな。
近づいてみると、この壁にはぎっしりとポーランド人の名前が刻まれている。この“名簿”が
何を意味するかは考えるまでもない。
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ワルシャワの女子高生(かな?)が中庭で写生をしていた。
ハデさのない、きれいなお嬢さんたちで、みんなマジメに絵を描いてる。
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博物館でいま見てきたばかりの悲惨なワルシャワの過去を思えば、いま、この同じワルシャワの土の上で
こうしてお嬢さんたちが平和に絵を描いていることがあり得べからざる奇跡にも思えてくる。

いかが?アナタも少〜しダークな気分になってきた?
しかし、ポーランドをめぐるイ課長のダークな旅はまだまだ始まったばかりなのである。


 

by tohoiwanya | 2013-04-12 00:18 | 2012.06 東欧・北欧旅行 | Comments(0)


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