2013年 08月 07日
アウシュビッツ博物館のダークな展示物。どんなものが、どのくらいあるのか? 今日の記事&写真はことのほかダークだから、そのつもりで覚悟して読んでほしい。 まずこんなものがある。収容者がつけていた義足とか松葉杖のたぐい。 これ、むかし写真で見たことがあって、その時もかなりショックをうけたけど、実物だよ。ううう。 身に着けてるものっていうより、これらは実質的には「身そのもの」。義足がなきゃ歩けんだろう。 ってことは、これらは死体からはずしたもの・・・か?・・・うう・・・ううう。 これがまたスゴい。お皿とかコップとかピッチャーとか、とにかく「器」。 膨大な数の、器という器が集められてるんだよ。これもまた見るとすごく暗い気持ちになる。 お皿やコップなんて、あまりにも日常的で、生活感あふれる道具じゃない?そういうものが 持ち主を失って、数えきれないほどあるわけだ。ここに連れてこられた収容者たちは、 コップみたいなものまで「行った先で使うつもり」で大事にカバンに入れて持ってきたんだなぁ・・。 こっちにはそのカバンが膨大な数、ある。 収容所に連行された収容者たちは、例外なく身の回りのものをカバンに入れて持ってきたはずだ。 それが残ってる。器と同じように「持ち主(と中身)を失ったカバン」たち。ものすごい量だ。 イ課長が想像するに、焼却処理できる人間(死体)とか衣服とかと違って、器とかカバンっていうのは 燃やして灰にしづらいから、仕方なく貯めこんで、そのまま残っている・・んじゃないかなぁ? カバンの展示室はこんな感じで、ガラスの向こうはとにかくひたすらカバン、カバン、カバン・・・ ああ、これも写真で見たことがあると思う。靴だよ。収容者たちが履いていた靴。 これもカバン同様、燃やしづらい革製のものが多いから残っているのかも。 パネル展示のところで「なんとかミリオンの人々が殺された」と言われても正直、イメージがうかばない。 しかしこういう展示はここで膨大な数の人が、義足やカバンや靴を奪われた後、殺されたということを 無言で、すごい力で訴えてくる。見学者はその無言の圧力を受け止めなければならない。 この辺になるとガイドさんは何も説明しなくなり、見学者も完全に無口になる。 説明不要のものが、ものすごい量そこにあり、今まさにそれを見ているという事実の重さに 打ちのめされるしかないのだ。 最後に毛髪だけが保存された展示室に行った。その展示室は撮影禁止の看板があったから写真はない。 髪の毛って痛みやすいから、照明や空調にも気を使って保存してるんだと思う。 収容者たちが「これからシャワーだよ」と言われてガス室に送られていたというのは有名な話で、 女性の場合は髪を切られ、全裸にさせられて(名目上、シャワーだから)、ガス室に押し込められた。 映画「シンドラーのリスト」にもその“事前処置”の様子が非常にナマナマしく描かれてるけど、 その「事前処置」で刈り取った女性の髪なんだろう。それが残ってる。 ヤマのように、という子供じみた表現しか思いつかないけど、とにかくヤマのようにある。 カバンや靴と同じような感じで堆積してるんだよ。女性の髪が。もうどんな感想の言葉も出てこない。 ちなみに、ドイツ軍は刈り取った大量の毛髪を、ジュウタン等の材料にしてたって話で、 髪の毛で編んだ(織った?)ものも一部展示されている。 こうして、見学者は一通り、博物館の展示物を見たことになる(んだと思う)。 もちろん、遺品や遺髪以外の展示もたくさんある。たとえば、銃殺用の壁に立って銃殺される前に 服を脱いだりする“銃殺控え室”とか。下が男性用控え室なのである(女性用もある)。 こういう大量のダークな展示物を見て、そのダークな雰囲気に完全に押しつぶされたイ課長。 いったん外に出て、外気と陽光にふれたときは、正直少しホッとした。 もっとも、外に出てもそこには高い壁と、鉄条網と、監視用の塔が当時のまま残ってるわけで、 まだ自分は強制収容所の中にいるんだということを再認識させられるわけだが。 ほら、読んでるアナタもすっかり暗い気持ちになってきたでしょう? しかしアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所の見学ツアーはまだまだ続くのである。
by tohoiwanya
| 2013-08-07 00:03
| 2012.06 東欧・北欧旅行
|
Comments(2)
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みゆ
at 2013-08-08 08:36
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イ課長さん、お久しぶりです。
アウシュビッツの連続記事、その悲惨さがよく伝わって来ます。 特に4枚目から6枚目の写真、全体像や、見学者との対比で、その圧倒されるような量が分かりました。 毎日、ガス薬の缶が開けられ、銃声がなり、死体が転がってることが日常だったと思うと、その集団心理が、本当に怖いです。
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tohoiwanya at 2013-08-08 11:29
>アウシュビッツの連続記事、その悲惨さがよく伝わって来ます
みゆさん: お久しぶりです。世間は夏休みだっていうのに、暗い連続記事ですみません(笑)。 私が行ったのは6月でしたから、ちょうど初夏で(ポーランドはけっこう寒かったけど)、 アウシュビッツも、周辺の木々は鬱蒼たる緑、地面もみどりの草が覆ってて 外見的にはそんなに荒涼とした感じはしない。でも展示物を見ると、 たちまち心はダークになりますね。 この収容所が作られた当時は木々もずっと小さかった(か、存在してなかった)はずで、 そこをボロボロの囚人拭くを着た収容者たちがうごめいていたわけだから 殺伐たる場所だったんだと思います。 |
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