2015年 12月 14日

アンコール・ワット【乳海撹拌】

本日の標題、にゅうかいかくはん と読む。

アンコール・ワットについて書かれたどのガイドブックも、第一回廊の乳海撹拌のレリーフのことは
必ず触れているはず。「圧巻」「最も有名」「第一回廊最大の見もの」てなことが書かれてると思う。
東回廊左側に彫られたこの乳海撹拌こそ第一回廊のレリーフ見学の、まさにクライマックスなのだ。
どのガイドさんもここに来るとそれまで以上に説明に熱が入る。

乳海撹拌とはヒンズー教の天地創造神話みたいなものなのである。
我々のガイド氏が「ぼく、しんわのなかで、これいちばんおもしろいとおもう」と言うだけあって、
そのストーリーは気宇壮大にして波乱万丈、神話につきもののトンデモ性もふんだんにあって
確かに面白いんだよ。このブログでも簡単に紹介しておきたい。

話は神々(イイモノ)と、アスラ=阿修羅(ワルモノ)の戦いという構図の中で始まる。
ギリシャ神話でもゼウスが巨神どもと大戦争したって話があったはずで、大昔に神さま同士の
熾烈な戦いがあったっていうのは神話の世界じゃよくある設定みたいだね。

ヒンズー教における神々vs.アスラ戦争ではイイモノの神々の方がちょっとドジを踏んだために
劣勢に陥る。このままじゃワルモノのアスラ軍に負けちまうかもしれん。やばい。ピンチだ。
そこで、何かイッパツ逆転のいい手はないかっていうんで神々軍はヴィシュヌ神に相談してみた。
そこで万能のヴィシュヌ神がひねり出した妙案が「乳海撹拌」だったというわけだ。

乳海撹拌って、要するに海をかき回すだけかき回してミルクにしちまうという超スーパー大事業で、
その乳海からは不老不死の薬「アムリタ」が出て来るはず。このアムリタを飲みさえすりゃ神々軍は
たちまちホウレンソウ食ったポパイみたいにパワー100倍になってアスラに勝てるってわけだ。

しかし乳海撹拌なんてスゴすぎる大プロジェクトは神々だけじゃムリ。
そこで「アムリタ半分あげるからさぁ」とダマして(ひでぇ)アスラ軍に協力してもらうことにした。
アスラたちも不老不死の薬アムリタは欲しいわけヨ。そしていよいよ敵味方が協力して始まった
壮大すぎる乳海撹拌プロジェクト。まさに天海を揺るがすそのスケールがすごい。

①まずマンダラ山という山をひっこ抜いて巨大な亀の背中に載せ、半分くらい海に沈める。
②そのマンダラ山に蛇、7つの頭を持ったナーガという超巨大蛇をぐるぐる巻き付け、ツナ代わりにして
 シッポの方を神々軍が、頭の方をアスラ軍がそれぞれ持って交互に引っ張りっこする。
③それによってマンダラ山(と亀)は高速で回転し、いわば巨大ミキサーになって海を撹拌する。
 海中生物たちは超高速撹拌で四分五裂にチギれ、さらに小さく分子レベルにまでチギれ、
 しまいには海全体がコロイド化?して乳海になっちまった。

ちびくろサンボでトラが高速回転のあげくバターになったのに比べたら、乳海撹拌で魚たちが
ナノレベルにまで粉々にされ、海がミルクになる方が多少は現実味があるな(ねぇよ)。

この乳海撹拌のための綱引き・・というかヘビ引きは千年(!)続いたらしい。やがて乳海の中から
太陽と月だの、天女アプサラだの、絶世の美女ラクシュミー(後にヴィシュヌの奥さんになるらしい)だの
いろんなものがブクブクと現れ、ついに不老不死の薬アムリタを持った女神があらわれた。やった。

たちまち神々軍とアスラ軍の間で醜いアムリタ争奪戦が始まる。しょうもねぇ連中だぜ。
一度はアスラ軍に奪われたんだけど、絶世の美女に変身したヴィシュヌ神の色仕掛けでうまく取り返し、
最終的には神々軍だけで不老不死の薬・アムリタをごくごく回し飲みできた。めでたしめでたし。

・・・と思ったらまたまたピンチ。アスラが一人、神々に化けてまぎれ込んでアムリタを飲もうとしてる!
今まさに彼がゴクリと飲もうとした時、太陽の神と月の神が気づいて「あ!あいつアスラですぅ!」と
ヴィシュヌ神に言った。間一髪、ヴィシュヌ神は素早くチャクラム(リング状の円盤)を投げて
アスラの首をチョン切った・・・のはいいのだが・・・。

アムリタを飲む途中で首切られたもんだから、そのアスラは首から上だけ不老不死になるという
中途半端なことに(笑)。怒り狂った「首だけアスラ」、告げ口した太陽の神と月の神に食らいついて
飲み込むんだけど、首から下がないから何度飲み込んでもすぐノドからポロリと落ちてしまう。だから今でも
太陽と月は時々「首だけアスラ」に飲み込まれて短時間だけ隠れるのである(これが日食&月食)。

紆余曲折の末、アムリタを飲んだ神々は不老不死の身体となってアスラとの大戦争に勝利を収め、
今でも神々が支配する「この世」が続いているのでありました・・・と。

どうよこれ。大スペクタクルあり、アクションあり、絶世の美女の色仕掛けサービスシーンありで、
確かにめちゃくちゃ面白い。なぜハリウッドはSFX超大作として映画化しないのか。
(下の写真中央がマンダラ山の上で乳海撹拌の指揮?をとるヴィシュヌ神。画像はWikipedia)
f0189467_17404016.jpg
 
乳海撹拌のレリーフは東側回廊の左半分、前回書いた南側回廊右半分の「天国と地獄」を
見終わってカドを曲がるとあるわけだ。乳海撹拌だけでもまた95mだからね。神々やアスラたちが
「どこまでもどこまでも・・」という感じで並んでヘビを引っ張ってるサマは一種幻想的な迫力で
見る者を圧倒するわけだけど、長くなったので続きは次回だ。
(ヲマエ!今日は神話紹介だけかよ!しかも写真はWikipediaのちっちぇーの1枚だけ!)

 
[PR]

by tohoiwanya | 2015-12-14 00:20 | 2014.09 東南アジア旅行 | Comments(0)


<< 乳海撹拌【ビジュアル資料補足】      アンコール・ワット【第一回廊】 >>