2016年 07月 12日

黒の仏塔

信じ難いことに未だに英国時差ボケが治らないイ課長です。本日は松本清張の小説みたいな標題です。

さて。
東南アジア、特にタイの仏教施設を見学した日本人の中には、仏像や建物の金ピカぶりにちょっと辟易
する人も多いはずで、少なくともイ課長はする(笑)。金ピカ系仏教美術って、どうしても「最近つくられた
新しいもの」に見えるから、ツルツルでピカピカではあっても時代を経た有り難みが感じられなくて、
「ただハデなだけ」に見えちゃうんだよねぇ。

それは日本国内の史跡でも同じ。たとえば京都の金閣寺って今は「創建当時の姿」が再現されてるから
金ピカで、それが水に映えてすごく美しい。

でも、むかし白黒写真で「焼失前の金閣寺」を見たイ課長は驚いたよ。もちろん金箔なんてハゲて、
薄汚れた古~い木造建築物なんだけど、どっしりしてて風格あって、そりゃもう素晴らしかった。
「いくら新しくて金ピカのもの作っても、古いオリジナルにゃかなわねぇ・・」なんて思ったもんだった。
もっとも、金ピカ金閣寺の方が東南アジア系観光客からは圧倒的に支持されるのは間違いないだろうが(笑)。

金ピカの話をしたのは、ヴィエンチャンにあるタート・ダム=黒塔の話を書くための、いわば前フリ。
タート・ダムはイ課長の宿泊ホテルからメコン川の方に歩いて行く途中にある史跡なのである。
テクテク歩いてると、突然道がロータリーになってて、真ん中にこんなのがデンとあるのだ。
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うはー・・・これがタート・ダムですか。写真で見た時から異様なたたずまいだなぁと思ってたけど
実際に見てもなかなか異様だ。要するにこれも仏塔なんだけど、黒塔っていうだけあって確かに黒っぽい。
手前の車と比べるとわかるように、それほど巨大仏塔ってわけじゃないが、風格あるじゃん。
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この「時代がついた感じ」がシブくていいよね。16世紀頃のものみたいで、元は「白い塔・黒い塔」の二つあって
黒い方だけ残ったとか、元々金ピカの仏塔だったのが、タイが攻め込んで金をはがして持ってったから黒くなったとか、
言い伝えが諸説あるらしい。

イ課長が好きな伝説は、このタート・ダムの下にヴィエンチャンの守り神である巨大蛇・ナーガが住んでて、
外国から侵略されたりして国が大ピンチになるとグワッと地上に現れてヴィエンチャンを守ってくれるという
言い伝え。ちょっと大魔神っぽい(笑)。でもそのくらいの歴史と風格は十分感じさせる塔だよ。
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もうお分かりだろうが、イ課長は金ピカツルツルのタート・ルアンより、ドス黒く薄汚れてところどころ
雑草まで生えてる、このタート・ダムの方が断然気に入ったんだよ。そう思う日本人は多いんじゃないかなぁ?
これに比べると、タート・ルアンは金ピカで新しそうな分、損してると思う。

ここまで書いてイ課長はハタと気づく。
これって要するに、仏教建築や仏教美術をどう捉えるかの違いだ。

日本人は仏教美術を「古美術」として見てるんだよな、たぶん。古美術なら当然古い方がイイ。
金ピカで新しいものより古くて黒ずんで「時代がついた」由緒あるモノの方が有り難いわけで、
古くてクスんだ仏像に金箔貼り直してピカピカにしちまったら有難さも半減だ。

一方、東南アジアの仏教美術に対する見方は耐久消費財、たとえば「家」なんかに近いんじゃないか?
ずっと長く使うモノなんだから、新しさ・美しさを失わない方がイイに決まってる。金箔塗装がハゲたら
貼り直すのが当然。古くなったボロ家なんて有難さ半減じゃん。
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こういう視点の差。ドッチがイイ悪いという問題ではもちろんない。
でも「耐久消費財なら、確かにいつまでも金ピカで新しい方がいいよなぁ」と考えると、
今後東南アジアで金ピカ仏像を見ても、「うひゃぁ・・」っていう単純な辟易とは違う見方が
できるかもしれない、などと思ったりするワケよ。

他のことも書くつもりだったけど、金ピカ仏教美術に対する視点の話で長くなっちまったから、
本日はタート・ダムの話だけでおしまい(う、ウソだろヲイ・・)。

 
 

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by tohoiwanya | 2016-07-12 12:59 | 2015.09 東南アジア旅行 | Comments(0)


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