2016年 10月 10日
数年前、イ課長はある本でワット・プラケオにある壁画が紹介されたのを読んだことがある。 「ウワ何というかコレはまた・・」というような壁画なんだけど(笑)、ちょっと見たくなった。 それはインド発祥の壮大なる叙事詩ラーマーヤナを題材にした壁画なのである。 ラーマーヤナといえば、まず思い浮かぶのはアンコール・ワットの第一回廊だ。 ランカー島の戦いを描いたあの第一回廊のレリーフの素晴らしさは未だに強く記憶に残る。 ワット・プラケオにある壁画はラーマーヤナのタイ版・ラーマキエン叙事詩を題材にしてる。 基本的ストーリーはほぼ同じで、主人公ラーマ王子がサル将軍ハヌマーン率いるサル軍団に 加勢してもらいながらシータ王女を奪還するという「魔笛」みたいな、あるいはスターウォーズの 第1作めみたいな話が軸になってる。これを見たかったんだよ。 壁画ってどの辺にあるんだろうなぁ?と思ってたけど、いざワット・プラケオに行ってみれば そんな心配は無用であることがわかる。寺をグルッと取り囲む回廊全てに壁画があるんだから。 これ、一体全部で何mあるんだろう?すさまじい長さだよ? どこまでも続く長い壁画、どこが開始地点なのかもわからない(笑)。 適当なところからエイヤと見始めるしかない。どうせラーマーヤナのストーリーなんて ロクに知らないんだから、どこから見たって内容がよくわからないのは同じこと。 うぉっと、何だかいきなりスゴい場面です。 巨大化した誰かの上をみんながゾロゾロ登ってます。この巨大化した容貌魁偉なイキモノが サル将軍・ハヌマーンじゃないかと思うんだけど、違うかな? うぉっと、こっちじゃシッポを橋がわりにしておサルさんたちを渡らせてます。 やっぱこれがハヌマーン将軍だと思われます。大活躍です。しかし上の写真とはいささか お顔が違います。おそらく異なる画家が描いたんだと思われます。 お?これもハヌマーン将軍でしょうか?ここでは美女の人魚に言い寄っているではありませんか。 人魚のオッパイに手を回したりして、実にけしからん振る舞いに及んでいます。 この場面だけ見ると勇敢なサル将軍どころか、単なるエロザルです(笑)。 おっとーーー!!出ました。これです!この絵が見たかったんです。 数年前に読んだ本でこの場面が写真で紹介されてて、あまりの異様さにイ課長は呆れた(笑)。 サル将軍・ハヌマーンが自分の大口の中に主人公たちを安全に避難させてる場面・・らしい。 アップで見るとこれがすごい細密描写だ。口の中にかくまわれた人間たちの金のヨロイの 細かい模様まできちーんと描かれてる。いやーすげぇ。 長〜〜〜い壁画のどの辺のこの絵があるのか全然わかんなくて、ずいぶんグルグル歩いたけど しっかり見られて余は満足ぢゃ。 このラーマキエン壁画、とにかくサル将軍はそこらじゅうに出てくる。これもそうだよな。 こっちじゃ巨大な敵と勇敢に戦ってて、さっきのエロザルと同一サルとは思えません(笑)。 とにかく原作のラーマーヤナは波乱万丈&見せ場タップリの一大叙事詩。壁画のどこを見ても 「何だかわからんが何やらスゴい」って感じの場面ばっかりだ。これ、畑を耕してたら ツボの中から子供が出てきたっていうのは、ひょっとするとシータ姫誕生の場面かなぁ? さっきも言ったけど絵の細密描写がとにかくすごくて、下の敵味方入り乱れた戦いの様子も 大変なもんだ。これはアンコール・ワットにもあった「ランカー島の戦い」の場面だと思われる。 ちなみに、ランカー島って現在のスリランカ島であるっていうのがラーマーヤナ解釈においては 定説になってるようだ。 とにかく見れば見るほど細密な描きぶりには驚く。「写真のようにリアル」っていうのとは 全然違って、極めて様式的ではあるんだけど、ものすごく丁寧に時間をかけて描いてる。 たとえば下の絵、真ん中のお堂の中に黒い顔の人がいて、前に身を乗り出してるよね? その身を乗りだした人をアップで見るとこの細かさだからね。金の装飾模様がすごい。 「画家の芸術性」なんてものは最初から意識せず「職人の緻密さ」のみを追求して描いた 壁画って感じだ。ストーリーがわかんなくてもなかなか見応えある。 しかしラーマーヤナの影響力には改めて驚かされるね。 元々インドで出来た叙事詩だろ?それがこうしてタイでも、カンボジアのアンコール・ワットでも、 ラオスのワット・マイでも描かれ、果ては海を渡ってインドネシアのバリ島にまで伝わって あのケチャになったんだから。西南~東南アジアはラーマーヤナ共通文化圏と言っていいんだろう。 (ケチャの『チャッチャッチャッ!!』って掛け声はハヌマーン将軍率いるサル軍団を表してるらしい)。 いやいや楽しませていただきました。ラーマキエン壁画。 詳しいストーリーを知らず、ハヌマーンの大口だけ見て喜んでるようなイ課長だから さらーっと見て済んだけど、ラーマーヤナに詳しい研究者がジックリ観察しながら見たら 一日かけてもとても足りないだろ。そのくらい長大な壁画なんだよ。 実はだね、イ課長は最近になってラーマーヤナのあらすじくらいは勉強し始めたのである。 終盤のランカー島の戦いはまさに全編のクライマックスで、いろんな見せ場について知ると 「この場面、ワット・プラケオの壁画ではどう描かれてたっけかなぁ?」と思うことも多い。 ちょびっととは言え、せっかく勉強したんだから、次回バンコクに行くことがあればもう一度 ラーマキエン壁画をジックリ見たい気もするが、そのためには500バーツの高額入場料が必要。 壁画見るだけのためにもう一度500バーツ・・・うーむ・・微妙だ。
by tohoiwanya
| 2016-10-10 00:14
| 2015.09 東南アジア旅行
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