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2008年 11月 02日

天井桟敷のイ課長-その2-

序曲が始まった。
しゃあない。たぶん第二幕が終わったとこで一度休憩があるはずだから、
今後の身の振り方についてはその時に考えるとしよう。
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ところがだ…
いよいよ幕が開いたその「マクベス」がさぁ…。

シェイクスピアの原作と同様、オペラ「マクベス」も冒頭は暗い森の中で
マクベスとバンクォーが不気味な魔女の予言を聞くシーンから始まる。
しかし魔女なんて出てこない。魔女役女性コーラスは聞こえるけど、舞台には
マクベスとバンクォーの後ろに「謎の男女軍団」がいっぱい立ってる。ありゃ何だ?

観客の疑問と関係なく劇と音楽は容赦なく進行していく。「謎の男女軍団」は
後ろの方である時は「虫を追い払い」、ある時は「身体を掻き」、ある時は「新聞を読み」…
といった演技を全員でヤル。ヤルのはいいんだけど、ソレにどういう意味があるの?
「謎の男女軍団」のうるさい動きが気になってしょうがない。

第1幕2場(だったかな?)、マクベス夫人が登場する頃になっても「謎の男女軍団」は
舞台の後方でいろんなことをしてみせる。最後の方じゃとうとう男女軍団は服を脱いで
一斉に交尾を始める(笑)。その間舞台照明はフラッシュ点滅でチカチカ…目が痛いス。

しかしまぁ一体何なんだこりゃ?ドウいう演出なのさ?意図がサパーリわかんねぇ。
客席には膨大な数のハテナマークが浮かぶ。そのうちの一つはイ課長のだ(笑)。
演出家がアレコレ斬新なことをやろうとしてるのはわかるけど、結果的にはそれは
オペラの盛り上がりや観客の「より良い鑑賞」に寄与してない。逆に阻害している。

「謎の男女軍団」だけじゃない。
肝心のマクベスやマクベス夫人といった主役級歌手たちもやたら舞台上であれこれ
ヘンな動きをしてみせる。それがうるさくてオペラの方に全く集中でけん。

フと後ろを見ると、「見るのをあきらめた」高齢観客たちがテキストを読みながらジッと
聞いてる。ちゃんとテキスト読めるように手元に照明が用意されてるのにビックリ。
うーーむ…この珍奇な演出を見られない彼らは不幸と言うべきか、それとも
こんな珍奇な演出に邪魔されず、音楽を聞けるのは幸福と言うべきなのか…。
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第2幕、宴会でマクベスがバンクォーの亡霊におびえるシーン。
ここで例の「不気味なコドモ」がバンクォーのお面をかぶって出てくるんだけど
この場面のキモチ悪さには驚倒した。コドモの身体の上にオトナの顔がつくってうのは
山岸凉子の名作恐怖漫画「汐の声」でもそうだけど、キョーイ的に気持ち悪い。
バイエルン歌劇場の「マクベス」の珍奇な演出の数々の中で、「すげぇ!」と思ったのは
ハッキリ言ってそこだけだった(笑)。

第2幕の幕切れ。マクベス夫人はバンクォーの生首を自分のスカートの中に入れて
おマタにはさんだ状態で唄う。ひーーー!これは「サロメ」かよ?(笑)
唄ってるマクベス夫人が少し足を開く。バンクォーの首が彼女のおマタから落ちて
舞台の床に「ゴットン!」という音をたててぶつかる。ひーーーー!!

やっと第2幕が終わって休憩。
もうわかった。この「マクベス」の演出がどういうモノなのかは十分堪能したっす。
後半のマクベス夫人狂乱の場とか、まだ見せ場はあるんだけどもうイイよ。
1800円分はすでに十分鑑賞したし(笑)、立ち疲れたし、あとはホテルに帰って
缶ビールでも飲んでゆっくり寝て、疲労回復して明日の帰国に備えさせてくれ。

なお、バイエルンの「マクベス」を詳しく見たいヒトはここで動画が見られる。
http://operntv.eviscomedia.com/media.1005.html

バイエルン歌劇場の前でボンボン煙草を吸うブルジョア観客の中をすり抜けて
ふらふらとホテルに戻った貧民イ課長なのであった。
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地下鉄で戻ってきて、ミュンヘン中央駅で缶ビールを2本買い、
晩メシとして立ち食いドネル・ケバブをテイクアウトし(またトルコめしかよ)、
ホテルでむさぼり食い&むさぼり飲んで、倒れ込むように寝たイ課長。
こうして、今年2度目の欧州出張最後の金曜の夜は終わったのであった…。
 

by tohoiwanya | 2008-11-02 05:57 | 2008.10 欧州出張 | Comments(0)


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