2012年 05月 20日

レヒネルさんの話

ブダペストでちょっと見たかったものの一つに工芸美術館がある。

展示物が見たかったわけではない。
そもそも、工芸美術館ってどんなものが展示されてるのかもよく知らない(笑)。
見たかったのは建物の外観なのだ。

ここは大抵のガイドブックに「建物そのものに見る価値がある」と紹介されていて、
ニュアンス的には限りなく「(展示物より)建物の方に見る価値がある」という
紹介の仕方に近い…ような気がするんだよな、イ課長には。

ガイドブックの写真を見ると確かにタイル装飾が非常に美しそうな建物なのだ。
外観だけでも見てぇな、と思ったからちょいと足を伸ばしてみた。
地下鉄の…えー…ナントカって駅で降りて(ヲイヲイ)、歩いてすぐ見つかった。

おお~…これは確かに華麗な建物だね。
マーチャーシュ大聖堂の内部や中央市場の外装と同様、タイルによるモザイク装飾が中心だけど
特にグリーンと金色の組み合わさったドームの装飾が美しい。
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この工芸美術館。レヒネルって建築家の作品なのだ。
Wikipediaを含めてレヒネル・エデンって書いてあることが多いけど、これはおそらく
ハンガリー風の読み方のはずで(そう、ハンガリーは日本語と同じく姓→名の順に言うのだ)
一般的な西洋風の読み方をすればエデン・レヒネルさんになるんじゃないかな?
(だからフランツ・リストはハンガリー風に読めばリスト・フェレンツになる)

このレヒネルさん。ちょっと乱暴にたとえるなら「ブダペストのオットー・ワーグナー」とでもいうか…。
ハンガリーのアール・ヌーボー建築を代表する、まぎれもない第一人者だった人らしい。
もちろん、ブダペストに行った時は彼のことなんて全然知らなかったんだけど、
日本に帰ってきて、彼のことを調べてみるとなかなか面白い人だったようだ。
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仕事ぶりはとにかく凝り性だったようで、こういうドームみたいに目立つところだけじゃなく、
地上からは見えないような屋根の上の細かい装飾にも凝りに凝る人だったらしい。
当然のことながら建築コストはふくらむ一方。毎回予算オーバー。

そんなレヒネルさんの凝り性っぷりをよく表すエピソードを帰国後に知った。
ある建物を作ってる時、関係者が無駄な建築コストを削ろうとして、レヒネルさんに
「屋根の上の装飾にカネかけたって、誰からも見えないでしょう?」と言ったらしいんだな。
するとレヒネルさんはこう答えたといわれる。



だって鳥が見るじゃないか


建築家が残した言葉が有名になって今でも残ってるなんていう例はあんまりない。
あったとしても「すべての芸術は必要に従うのだ(オットー・ワーグナー)」みたいに
小難しい言葉が多い。その中にあって「鳥が見るじゃないか」という言葉はシンプルでありながら
完璧主義者の凝りすぎる性分を表してて、レヒネルさんのことがちょっと好きになった。

イ課長の想像では、レヒネルさんはこれを冗談として言ったんじゃなく、マジメな顔で
答えたんじゃないかって気がする。こんな具合に、あまりに凝り性だったんで後年は
あまり建築の注文も来なくなって、不遇をかこったとも言われている。

ブダペストにはこんな感じでタイルのモザイクで装飾された建物がよく目につき、
それぞれに美しい。こういう建物がレヒネルさんの影響をうけているのか、あるいは逆に
こういうハンガリー的装飾をレヒネルさんがアール・ヌーボーに取り入れたのか?
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「鳥が見るじゃないか」のエピソードで有名なのはブダペストの旧郵便貯金局っていう建物だ。
戻ってきてから知ったんだけど、この工芸美術館からそんなに離れてない場所にあるらしい。
事前に知ってれば「鳥しか見えない」ような屋根の装飾を地上から眺めに行けたのに…。
ちょっと残念なことをしたぜ。



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by tohoiwanya | 2012-05-20 00:08 | 2011.06 ウィーン旅行 | Comments(2)
Commented by みゅげ at 2012-05-21 23:51 x
中も美しかったですよ~♪♪
Commented by tohoiwanya at 2012-05-22 13:07
みゅげさん:

あれ?アナタいまおフランスにいるんじゃないの?もう帰ってきてたんスか?
てっきりミクシはおフランスから携帯か何かでアップしてるんだと思った。

工芸美術館、中に入られましたか。
他の人が撮った写真で見ると、確かに入口ホール(なのかな?)あたりの
天井の装飾もすごく美しい。建物だけ見るにしても、遠景だけじゃなくて
もう少し近くから観察すべきだった…。
 


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