2013年 08月 26日

ポーランドのドライバー氏の思い出

アウシュビッツからの帰りのツアーバスでの話。
強制収容所に行ったことと同じくらい、この話を書きたかった。
(なお、本日の記事に関連した写真がないので、クラクフの街の写真を適当に挿入しております)

当然のことながら、ツアーバスにはいろんなホテルの宿泊客が混在して同乗してる。
バスはそのうちの「主なホテル」にしか停まらないから、イ課長は自分のホテルに近そうな、
どこかの停車ポイントで降りなきゃならん。帰りのバスで女性係員からどこで降りたいか、聞かれた。

停車ポイントはいくつかあるようだけど、よく聞き取れないし、ホテル名を言われても場所がわからん。
中に「シティ・センター」っていうのがあった。たぶん旧市街の中心部のことだろう。
街の中心部なら、どこであってもホテルまでは歩いて帰れるだろうから「シティ・センター」と答えた。

クラクフの街に入ってきたバス、最初に停まったのがヒルトンだったかな?それ以降、停車するたびに
ドライバーがドスの聞いた声でホテルの名前を言う。だから彼が「シティ・センター」って言ったところで
イ課長は降りればいいわけだ。
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バスが停まるたびにドライバー氏はホテルの名前を叫び、何人かの乗客が降りる。
だんだんバスの中の乗客は少なくなっていく。シティ・センターはまだかな?

ところが、外の景色はどうも街の中心どころか、だんだん郊外っぽい雰囲気になってきた。
この辺からイ課長は不安になってきた。どうもオカシいぞ?どこかで降りそこなったのかもしれん。
しかしこのドライバー氏、まだ「シティ・センター」なんて言ってねぇはずだけどなぁ?

いまやバスはすっかり街を抜けちゃって、残った乗客はイ課長含めてたったの3人。
ここでドライバー氏は3人の乗客に「アンタら、どこで降りんの?」って感じで尋ねてきた。

イ課長以外の二人はナニ語かわからない言語でナントカって答えてた。
イ課長はしょうがないから英語で「シティ・センター・・・」と答えるしかない。

それを聞いたドライバー氏、いきなりすごく怒り始めた。
ポーランド語で、おそらく何か罵りの言葉を叫び、ハンドルを叩いて怒ってる。
あらーーーー、やっぱりイ課長はもっと早く降りなければいけなかったみたいだ。

このドライバー氏が何回目かの停車のとき「ノボテル・ナントカカントカ」って叫んだんだけど、
今にして思えばあの「ナントカカントカ」の部分がポーランド語で「シティ・センター」って言ったか、あるいは
ポーランドなまりの聞き取りづらい英語でそう言ったのかもしれない。しかし全ッ然わかんなかった。

しかしドライバー氏の身になれば怒りたくもなる。
バカなガイジン客が、とっくの昔に通り過ぎた停車場所で降りたいですぅ、なんて今頃ホザイてるんだから。

二人の客は、クラクフ郊外のどこかのホテルで降りた。残るはイ課長だけ。
「もう送迎は終わり!オマエもここで降りな」と言われる思った。しょうがない。そしたらホテルでタクシーを
呼んでもらって市街に戻るしかない。街からけっこう走ってきたからタクシー代かかるだろうなぁ・・。
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ところがこのドライバー氏、相変わらずブリブリ怒りながら「オマエは座ってろ!」みたいなことを言う。
あらら、ひょっとして、市街まで戻ってくれるの??

バスはたった一人の乗客・イ課長を乗せてクラクフ市街に逆戻り。
けっこう距離があったよ。最後のホテルから10分~15分くらい走ったと思う。これは申し訳ないことをした。

しょうがないから、イ課長はバスの中で「地球の歩き方」のポーランド語会話のページを開き、
ある言葉を一生懸命おぼえた。これを最後にドライバー氏に言おうと思ったのだ。
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やがて、バスが停まる。
駅の近くにあったショッピングセンターが見える。ドライバー氏が「ほら、ここから先はわかるだろ?」」みたいに
言った(んだと思う)から、ウンウンとうなずき、今覚えたばかりのポーランド語を生まれて初めて使った。


  「あー・・・プシャプラッシャム


これ、ポーランド語の「ごめんなさい」なんだよ。
シティ・センターと聞こえなかったとはいえ、イ課長が降りそこなったために余分な労働を強いられた
彼には申し訳ないことをした。ここは素直に謝っておこうと思ったのだ。
こういうところ、イ課長もいかにも「日本人的」かも(笑)。

イ課長に謝られたそのドライバー氏、どうしたと思う?
ムスッとしながらも「まぁいいよ」てな顔でうなずく、というのがイ課長の予想だった。

ところが「ゴメンナサイ」を聞いたこのドライバー氏、突然ものすごく照れはじめたんだよ。
左手で顔を覆い、笑いながら右手でイ課長の方をハタくような仕草を見せる。
「オマエ、バカ、なに謝ってんだよ、いいって、いいから、トットと降りろ、バカだな」って全身で言ってる。
さっきまでブリブリ怒ってたけど、このドライバー氏、実はすごくいい人なんだよ。

照れつづけるドライバー氏に、さらに「ジンクェ(ありがとう)」と礼をいい、手を差し出したら握手してくれた。
彼は相変わらず照れ笑いしながらの握手だ。でもこんなに嬉しかった握手はない。

「ポーランド人、親切で、素朴で、照れ屋で、いい人ばかり」っていうことを、イ課長はこのブログで
何度も書いた。その印象を決定的にしてくれたのが、このドライバー氏であることは間違いない。
アウシュビッツに行って重苦しかった気分を、このドライバー氏が最後に嬉しい気分にしてくれた。

バスを降りそこなったバカな東洋人の客がいてさぁ、しょうがねぇからまた街まで送ってやったらよゥ、
降りる時にポーランド語で「ゴメンナサイ」なんて言ってやんの。ったく、思わず笑っちゃったぜ・・

・・てな感じで、あのドライバー氏もイ課長のことをちょっとでも覚えててくれたら嬉しいなぁ。
少なくともイ課長はポーランド語の「ごめんなさい」は、生涯覚えてると思うよ(笑)。

  
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by tohoiwanya | 2013-08-26 00:06 | 2012.06 東欧・北欧旅行 | Comments(15)
Commented by まー at 2013-08-26 00:56 x
人様のブログを読んで人生初コメントです。
思わず「幸せ~」を感じたお話でしたっっ!
実は、課長さんのブログひょんなことからずーっと前から
拝読させて頂いてます。強制収容所の話・・・もぜーんぷ。
これからも、続けて下さいませね。
小さくても、私の日々の楽しみですから
Commented by 加代子 at 2013-08-26 02:06 x
良い話ですねェ。
ヨーロッパ人は 自分に非があっても
誤らない人が殆どなので ドライバー氏も
イ課長さんの言葉は意外だったのでしょうね。
Commented by 権左衛門 at 2013-08-26 02:12 x
私が去年ヴュルツブルクに行ったとき、ものすごい氷雨&雪で、普段ならバスは乗らないんだけど、観光案内で聞いたバスの番号のバスに乗りました。レジデンツで降りるということを、運転手さんに紙で見せたにも関わらず通過され、持っていたiPhoneのgpsがどんどんワイン畑に突入し、お客さんが私を含め3人になったところで、恐る恐る再度聞きにいくと、運転手さんにドイツ語でまくし立てられました。(涙)
周りは雪空のフランケンワインのぶどう畑が続き、こりゃ下手に降りるより終点(どこだかわかんないけど)まで行った方が賢いわ、と次にいくローテンブルグを諦め、しょんぼり席についた私。
そしたら、お客の一人が片言の英語で、これから親戚の家に行く用が済んだら帰りのバス停まで送ってくれると言ってくれるじゃあないですか。
ホイホイついて行くのもどうかと思うが、終点から折り返しのバスがあるとも限らない。えーい、腹決めてこのおじいさんに頼ろうと決めました。
おじいさんはいい人で、妹の家に荷物を届けにいくと、日本人が迷子になってんだよ、みたいなことを言ってハグしてくれました。そして、道すがら家族のことを話してくれたりしました。
Commented by 権左衛門 at 2013-08-26 02:13 x
しばらく雪の中待っていると、やっと目当てのバスがやってきて乗り込むと、何と行きのバスの運転手さんじゃあないですか。おじいさんは彼になんか軽口をたたいてたようです。
で、本来の目的地で下車する時に、ダンケシェーンって運転手さんにいうと、照れたように笑ってました。
おじいさんは雪の中ヴュルツブルクを案内してくれ、私も申し訳なく立ち寄ったお店のワインとチョコレートギフトをおじいさんと待っているであろうご家族に差し上げてくださいとお渡ししました。
予定が随分変わってしまい、ローテンブルグに暗くなってからついてしまいましたが、いい経験でした。
日本人て何でもかんでも謝ったり、卑屈になったりするっていわれますけど、私は、ビジネスはともかく、個人間のやり取りはそういう姿が美しいと思います。
イ課長さんなら共感してもらえるのではないかと期待しています。長文失礼しました。次の記事も楽しみにしてまーす。
Commented by シトリン at 2013-08-26 06:52 x
イ課長さんのブログを読んでいると
とりあえず何とかなる!と力強く思ってしまいます(笑)
こういうことがあると
またこの人に会いたいと懐かしい思いになるでしょうね・・・
Commented by みゅげ at 2013-08-26 08:35 x
権左衛門さんのおっしゃるように、私も個人間では「ありがとう」「ごめんなさい」はいつも大奮発(笑)

でもそうして、たくさんの親切さに助けられて旅をしてきた気がします・・・。
Commented by tohoiwanya at 2013-08-26 11:14
>思わず「幸せ~」を感じたお話でしたっっ!

まーさん:
こんな場末ブログをいつもお読みいただいた上に、コメントまで頂戴して
恐縮です、ありがとうございます。
このドライバー氏が送ってくれて、握手して別れたあとは私もしばらくの間
とてもハッピーでした。もしナニゴトもなく、普通にバスから降りていたら、
アウシュビッツの暗い記憶でドンヨリだったでしょうけど、ほんと、彼にはいろんな意味で感謝したい。
Commented by tohoiwanya at 2013-08-26 11:20
>イ課長さんの言葉は意外だったのでしょうね

加代子さん:
たぶんそうなんだと思います。「まさか謝るたぁ思わなかったぜ」って感じじゃないかと。
それまでの怒りっぷりが激しかったので、私としてもややビクビクしてたんだけど、
言ってみるもんですな(笑)。
責任の所在は誰か?なんて時に謝ると、なんでも自分のせいにされちゃうのかもしれないけど、
今回のケースみたいに、降りそこなったのは100%自分が悪い、なんて時は
謝るしかないですからねぇ。
Commented by tohoiwanya at 2013-08-26 11:30
>ダンケシェーンって運転手さんにいうと、照れたように笑ってました

権左衛門さん:
そういう「本来の計画から逸脱した時のこと」って忘れませんよねー。
私もむかーし、トホ妻と一緒にヴュルツブルクに行ったことあります。
1泊して、さて、次の日はどこに行こうかっていうんでバンベルクに行くことにしたんだけど、
電車を乗り間違えて、ニュルンベルクに行くことになってしまった(笑)。
まぁ我々のケースは「あちゃー間違えた」で済みましたけど、権左衛門の場合は
一人だし、天気は雪だし、心細いですよねぇ。そういう時の親切って身に染みます。

そういわれると、私もドイツじゃおじいさんから親切にされた経験が多いような気がする。
なんでだろう?お年寄りは「かつての同盟国だから」と思ってくれるのかな?(笑)
Commented by tohoiwanya at 2013-08-26 11:38
>とりあえず何とかなる!と力強く思ってしまいます

シトリンさん:
この時は、行きのバスには置いてけぼりを食い、帰りのバスじゃ折りそこねたわけで、
実に波乱万丈のツアーでしたけど、まぁ最後には、おっしゃるように何とかなりました。
しかし、こういう経験はしない方が望ましいのは確かなわけで・・・(笑)。

これ以来、私は海外でオプショナルツアーに行くときは「ホテルお迎え」っていうのに
異常に疑い深くなり、迎えがくると異常にホッとするようになった。根が小心者なので(笑)。
Commented by tohoiwanya at 2013-08-26 11:42
>個人間では「ありがとう」「ごめんなさい」はいつも大奮発(笑)

みゅげさん:
私も「ありがとう」はその国の言葉で覚えて、乱発するようにしてます(笑)。
ただ、「ごめんなさい」に使用頻度は低い。まぁ覚えるのが難しいってのもありますが(笑)。

海外旅行って、現地の人の親切があると、ないとじゃ雲泥の差ですよねぇ。
「あの時、もしあの人が助けてくれなかったら、一体どうなってたんだろう?」と思うと
恐ろしくなる。せめて、日本に来て困ってるガイジンさんには親切にしようと思ってます。
 
Commented by はな at 2013-08-26 20:38 x
すごく、イイお話ですね!
ポーランドの方々って、はじめは、そんなにニコニコしないし、
なんかあまり愛想ないな~ってイメージでしたが、帰る頃には
すっかり、その、素朴で照れ屋さんでとても親切っていうのが
私も身にしみて感じました!
Commented by tohoiwanya at 2013-08-26 23:13
>ポーランドの方々って、はじめは、そんなにニコニコしないし

はなさん:
そう。イタリア人なんかと違って(←やや偏見)、あんまり外人観光客ズレしてなくて、
ヘラヘラ寄って来るようなことは全然ないけど、この記事のバスの出来事とか、
ポーランド語のアナウンスがわからずに呆然としてたクラクフ駅での話みたいに
こちらが明らかに「不慣れで困ってるガイジン」とわかると、親切にしてくれる。
それも大げさじゃなく、どちらかというと控えめに。
そりゃもう、ポーランド好きになりますよねーーー。
Commented by マダムKenwan at 2013-08-29 02:04 x
ああ、こういうところイ課長さんのお人柄でしょうね。
私だったら「どうも有り難う!」と(日本語と英語で)言いながら
チップの小銭を渡して降りて来ちゃう、と思う。
スレちゃったなぁ。。
せめて現地の言葉で「ありがとう!」という努力はしたいと思いました。
Commented by tohoiwanya at 2013-08-29 17:19
>チップの小銭を渡して降りて来ちゃう、と思う

マダムKenwanさん:
おおそうか、余分な労働を強いたわけだから、ゴメンナサイの言葉なんかより
スッと小銭で感謝の意を表す方が「ヨーロッパ的」でスマートだったのかも。
あのドライバー氏もそうされれば、あんなに照れずに済んだだろうに(笑)。

現地語のありがとうは覚えるようにしてます。特にポーランド語の「ジンクェ」は
発音が簡単で覚えやすい。イタリア語の「5(チンクェ)」の最初の文字を
ニゴらせれば必ず通じる。もうそこらじゅうで使いまくりました。


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