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2013年 10月 07日

ダークツーリズムについて

これまでポーランド旅行に関する記事を書くにあたっちゃ「ダーク」という言葉が頻出してきた。
訪問予定施設の性格上、旅の前半が暗いものになることはわかってたけど、実際行ってみると
予想通り暗かった、というわけだ。

しかし、こういうダークな旅行って世界的に増えてるらしい。
イ課長のダークな旅、実は流行の先端をイッてたんだよ(笑)。

その名もダーク・ツーリズム。Wikipediaによる説明にはこう書いてある(記述は一部省略している)。

ダークツーリズム(Dark tourism)とは、災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした
観光のこと。ブラックツーリズム(Black tourism) または 悲しみのツーリズム(Grief tourism)とも
呼ばれる。観光とは一般に娯楽性のあるレジャーの1つだが、ダークツーリズムでは学びの手段として捉える。


・・・ということらしい。で、そういうダーク観光地の例として挙がっているのが

○スコットランドのカロデンやルーマニアのブラン城(古戦場や城跡)、
○日本の広島平和記念公園やウクライナのチェルノブイリ、ニューヨークのグラウンドゼロ、
 ポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(戦争やテロの跡地)
○ウェールズのビューマリス城(刑務所)、
○南京の南京大虐殺紀念館やカンボジアのトゥール・スレン虐殺博物館(虐殺の記録)などなど。
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ダーク・ツーリズムが増えてるって話は新聞なんかでも取り上げられてるみたいで、
近年の海外旅行トレンドの中でも新しい動きといえるんだろうな。しかし学びの手段とは・・・。

受け入れる側が「多くの人に見てもらいたい」と思っているのであれば、ダーク・ツーリズムっていうのは
結構なことだと思うし(迷惑がられてたり、無神経な態度での観光は論外だが)、みんなもどんどん
行ってみるべきだと思う。しかし、ダーク・ツーリズムって「ここは行ったから、次はぜひあそこへ」的な、
タノシい海外旅行とは違うから、考慮すべきポイントもあると思うんだよ。

①その場所のダークな歴史的背景に興味・関心・知識がある
これは当然で、単に「ここはスゴいらしいから行きたい」だけなら行っても感じるものは少ないだろう。
ナチの強制収容所については本や映画でもそれなりに知ってるし、個人的に非常に関心があった。
しかし何の知識もないスコットランドの古戦場に行ったって、何も感じないよねぇ。

②ダークな旅の後に明るい気分に戻れそうなモノがあること
これ、けっこう重要だと思う。せっかくの海外旅行で「最初から最後までひたすらダークな旅」って重すぎる。
イ課長の場合、旅の後半はウォヴィッチの聖体祭見学、さらにヘルシンキの「北欧効果」で救われた。
あれがなかったらと思うと・・(笑)。

広島が外人旅行者に人気なのも原爆関連施設を見たあと、世界遺産の宮島観光が出来るってことが
影響してると思うなぁ。やっぱね、ダークな旅の後には気分転換も必要だよ。
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③特定の思想やイデオロギーに染まっていないこと
いくらダーク・ツーリズムが学びの手段っつうたって、学びを押し付けられるのは好まない。
こういうところ、アウシュビッツ・ビルケナウは立派だったと思うんだよ。声高に自分たちを被害者として
強調したり、ドイツ軍を単純に悪者扱いするような、プロパガンダ的展示はない。
もっと“教育的”な展示にしようと思えばいくらでもできるんだろうけど、そういうところがない。

広島の原爆資料館を見た欧米人なんかも「客観的な展示」という印象を持つ人が多いらしい。
南京大虐殺紀念館とかトゥール・スレンなんかはどうなんだろうか?もし反日思想や反ポル・ポト思想が
強調された施設だったりすると、仮に見に行ったとしてもちょっとガッカリするんじゃないかと思う。

そこを見て、何を思うかは旅行者それぞれ。仮に将来、福島第一原発がダーク・ツーリズムで見学者を
集めるような施設になった時、そこを見て「放射能あぶない、原発やめよう」と感じる人がいる一方で、
「災害に強い原発を推進しよう」と感じる人がいたって全然構わないと思うんだよ。「ここに来た以上は
コレを学んで帰っていただきましょう」的な場所はゴメンこうむりたい。
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実際、ビルケナウやプワショフに行った時のイ課長なんてさ、その場の荒涼たる静けさと死の匂い、
そして、その場をいま自分が生きて歩いているという事実の重さを受け止めるのに精一杯で、
「二度と戦争を繰り返してはいけないと学びました」なんてとても言えないよ、率直に言って。
でも「何を学ぶか」じゃなく「何を思うか、感じるか」こそが重要なんじゃないか、とも思うんだよね。

ポーランドでのダークな旅。イ課長がそこで何を学んだかと聞かれたら、大した学習成果はない。
せいぜいポーランド語の「ごめんなさい」を覚えたくらいか(笑)。
しかし感じるものが多い旅だったことは確かなのである。

 


by tohoiwanya | 2013-10-07 00:14 | 2012.06 東欧・北欧旅行 | Comments(4)
Commented by hanatomo31 at 2013-10-07 13:03
ものすごく同感、共感!!
誰にでも向いてる旅行ではないけれど、一緒に行くべき相手を選べば
ものすごく有意義な旅になりますよね。
ダーク&お楽しみのペアはやパリ必須かと私も思います。
時折そのお楽しみを享受することが不謹慎なのでは…という思いに
駆られる時もあるけれど、でもやっぱりなくっちゃ精神の負担が重すぎるときもありますものね。
Commented by 権左衛門 at 2013-10-07 21:26 x
ダークツーリズムって言葉があるんですね。知らなかった。私は広島在住なのですが、客観的な展示と評されるのは嬉しいです(もし、おいでになるチャンスがあればぜひご案内させてください)。
感情的になると、挙句イデオロギーとか絡んじゃって、うまくいくものもドブに投げちゃう結果になりますもんね。
去年,ベルリンの壁のアート作品で「日本地区への迂回路」というのがあったんですが、びっしりと「日本鬼子」の悪戯書き…というよりも悪意ある書き込みで作品は無残な姿に。作者はどんな思いだろうか。
やっぱり、言いたいことが山のようにあったとしても、ぐっと堪えて相手の主張を聞いた上で、こちらの主張をするってのが大事だと思う。だからと言って、全て相手の言い分を飲むつもりはないんですけどね。
イ課長さんには、本当、色々な示唆をいただいています。私のこれからの旅の大きな道標にさせていただきます。
Commented by tohoiwanya at 2013-10-08 11:47
>精神の負担が重すぎるときもありますものね

ハナトモさん:
あると思います。というか、ポーランドではあった(笑)。
すごく有意義で「行ってよかった」と心の底から思うけど、とはいっても
やっぱりそれだけだとキビシいものがある。
海外旅行なんて高いお金と数少ない休みのチャンスを生かして行くわけで、
それがダークネス・オンリーだとさすがにちょっと悲しくなってくる(笑)。
 
Commented by tohoiwanya at 2013-10-08 11:54
>ダークツーリズムって言葉があるんですね。

権左衛門さん:
去年のポーランド旅行の時、勝手に「ダークな旅だ」とか何とか言ってたんですけど、
正式?にダークツーリズムという言葉があることをを知ったのは
私もたぶん今年になってからだと思います。

私の偏見だと、社会主義国の施設って一般に“教育的”で、「人民と労働者の勝利」的な
訴えかけが多いんじゃないかと思ってるんですが、実際はどうなんでしょうねぇ?
今や純粋社会主義国も少なくなっちゃったけど、そういえば今年行ったベトナムも
社会主義国だけど、そんなに教育臭は感じなかったなぁ・・?
 


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