2014年 01月 28日

タイとイ課長の間にあったこと その2

前回記事の末尾、「さて・・」から始めよう。

さて・・
イ課長がかくのごとく身を粉にしてタイの子供のために頑張ったのが2003年の話だった。
そして2013年、イ課長は久しぶりの東南アジア旅行でベトナム・タイを旅した。

タイに行くのは最初に出張で行った1996年以来17年ぶり。ハッキリ言って17年前に訪問した時は
バンコクにあまりイイ印象がなかった。でも、今回のバンコク再訪では前回訪問時の記憶と同じくらい、
あの絵本送付に奔走した日々が思い出される。あれから10年。あの絵本を当時10歳の子が読んだとして
その子はもうハタチの立派な青年になってタイのどこかにいるわけだからね。
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どこにいるんだろうなぁ?そう考えたくなるのが人情だ。
あの絵本を見て、日本語や日本文化に興味を持った子だっていただろう。「もっと知りたい」「勉強したい」と
向学心に燃えた子だっていたかもしれない。しかし、現実的に考えれば、その子がやがて日本語を習得し、
日本企業に就職し・・という理想的ストーリーを考えるのは楽観的すぎるだろうとイ課長は思うわけ。

あの絵本を読み、ボランティアから日本語を教わればカタコトの日本語くらいは覚えたかもしれない。
しかし、そういう子が日本語教育を続け、ステップアップできた可能性はあまり高くないと言わざるを得ん。
何しろ貧しいタイ北部の村。結局17~18歳くらいでバンコクに出稼ぎに行き、女の子ならゴーゴーバーとかで
踊ってる可能性の方がむしろ高い。残念だが、そう考える方が現実に近いだろうと思うのだ。

バンコクには「田舎から出稼ぎに来たニイちゃんネエちゃんたち」なんてたぶん星の数ほどいる。その中には
イ課長が送った絵本を子供の頃に故郷の村で読んだ子が混じっててもおかしくない。それは確かだ。
あの絵本がきっかけで日本語を覚え、日系企業に就職した人が仮にいたとしても、旅行中にそんな人と話す
機会はない。しかしバンコクでサービス業・接客業についているとすれば、イ課長が接するチャンスはある。

バンコクのホテルや飲食店で働いてる若者たちが、実は「あの絵本を読んだ子供」かもしれない。
あるいはゴーゴーバーで踊ってるダンサーのおネエちゃんが「あの絵本を読んだ子」かも・・・
その確率は限りなくゼロに近いが、断じてゼロではない。そんな可能性を考えながらバンコクの街を歩くなんて、
なかなか夢のある話じゃないか。

こんな想像をした。
イ課長が夜のタニヤ通りあたりを歩いて、カラオケ呼び込みネエちゃんから声をかけられたとする。
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いちじかんびーるのみほうだいよー ろっぴゃくばーつよー よってってーー
「うわー日本語じょうずだねぇ、どこで覚えたの?」
にほんご?えー こどものころ おしえてもらったよ
「へぇ~、子供の頃に教わったんだ。学校で?」
ううん。ボランティアの おねえさん おしえてもらったよ にほんごの えほん よんで べんきょした
「(ギクッ)え、絵本?あの・・・アナタの出身は?あー、あなたは、どこでうまれましたか?」
わたし うまれたとこ?パヤオ いなか
「パヤオッ?!そそ、その、絵本で日本語教わったのって、ひょっとして10年くらい前・・・??」
そう。わたしそのとき10さい いま20さい そのとき にほんご えほん いっぱい よんで べんきょした
「あ・・・(泣き始める)・・そ、その絵本を送ったのは、お、お、オレ・・・(あとは涙で声にならない)」

あーーわかってるよ、そんな夢のような偶然、あるわけないと自分でも思うよ。
でもね、何度も言うように、こういう出会いは「確率的にはあり得ないくらい低い」ということであって、
「原理的にあり得ない」わけじゃないんだよ。想像くらいしたっていいじゃないか!

去年6月に行ったバンコク、そのあと年末にもまた行ったバンコク。
絵本送付プロジェクトの思い出があるから、タイという国に対して今までになかった思い入れがあったし
90年代に最初に来たときよりも、ずっとずっとバンコクのことが好きになった。
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絵本送付プロジェクトからもう10年以上。その時タイに行ってた友人もずいぶん前に日本に戻ってるし、
あの時日本から送った絵本や図鑑の、現在の使用状況もわからない。しかしあの時みんなが善意で
送ってくれた本が(全部火事で燃えでもしない限り)今もタイの、パヤオの、どこかには残ってるはずだ。

タイにそんな思いのあるイ課長にとって、6月と12月のバンコク訪問は普通の旅行と少しだけ違った。
ただ観光するだけじゃなく、現地の、できれば若い人と話してみたいと強く思った。

バンコクにはカタコトの日本語くらいは操れる若い人は多い。そんな人とぜひ話をしたかったわけ。
日本語に興味を持ったキッカケは何だったのか?どうやって勉強したのか?出身はどこか?etc・・・
そんな話を聞いてみたくて、一人で行っても面白くなさそうな夜の繁華街にわざわざ行ったりもした。
そして、そういう時にイ課長は必ず相手の年齢と出身地を聞いた。

ま、予想通り「あの絵本を読んだ子」に出会うということはなかった。ええそれが現実ですとも(笑)。
でも相手の出身地を聞くとき、イ課長は常にドキドキしてた。もし相手が「パヤオ」って言ったら・・ってね。

それはものすごく複雑な「ドキドキ」だった。たとえばだよ?ゴーゴーバー(初めて行ったよ)のダンサーが
もし「あの絵本を読んだ子」だとしたら・・・。自分はその偶然を喜ぶだろうか?それとも、「あの子たち」が
結局はそんな場所で働かざるを得ない、キビシい現実に落胆するだろうか?これは自分でもわからなかった。
「故郷はパヤオ」と言ってもらいたいような、聞くのがコワいような、複雑な気分でドキドキしてた。

今後、タイに行くたびに(また行くと思うんだよね、きっと)必ず「あの絵本を読んだ子が今どこかに・・」と
考えるだろう。そういう意味じゃ、タイはイ課長にとってちょびっとだけ“特別な国”になったのかもしれない。

そんなバンコク旅行ネタの数々。いずれたっぷりご紹介します。たぁ~っぷりとね。




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by tohoiwanya | 2014-01-28 00:14 | 2013.06 ベトナム・タイ旅行 | Comments(4)
Commented by Bきゅう at 2014-01-28 07:26 x
それはご苦労されましたね。不健全が出て来たので、どちらの方へお話がいってしまうのか、ちょっと不安でしたが、すばらしい方向になりましたね。
Commented by tohoiwanya at 2014-01-28 16:49
>どちらの方へお話がいってしまうのか、ちょっと不安でしたが

Bきゅうさん:
いや、実際バンコクじゃカラオケ行ってみたりゴーゴーバー行ってみたりで
通常の旅行では考えられないくらい「夜の冒険」をやりましたですよ。
もっとも、せっかく頑張って入っても、相手に尋ねることといえば「年いくつ?」「出身は?」
「日本語どうやって覚えたの?」とかそんなことばっかりで、ヘンな客だと
思われたに違いないけど。
Commented by hanatomo31 at 2014-01-29 01:48
そうですよねぇ、さすがにその当時の本を読んで大人になった子供に出会っていたら、
もっともっとすごい大事件ですものね。
いずれにせよ、10年に渡って温めてきたタイとイ課長さんのボランティアつながりの
チャプター2だったのですね。いいお話です。
Commented by tohoiwanya at 2014-01-29 14:43
>本を読んで大人になった子供に出会っていたら

ハナトモさん:
確率的にはあり得ないわけだけど、「メチャクチャ低いとはいえ、そういう可能性がある国」
っていうだけで、何となく、ホンのちょっと、気の持ちようが違ってくる、とでもいうか・・。

しかしまぁ、あの絵本送付もあの時だから出来たけど、今だったら体力的にまずムリ(笑)。
やっぱり何事も「やれるうちにやっておけ」なんだなぁと思います。
タイにも「行けるうちに行っておけ」とか何とかゴタクを並べて、また行きますよきっと。


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