2016年 01月 30日

アンコール・トムを見る【その3】

口元にクメール・スマイルをたたえた巨大観世音菩薩に見守られながら、バイヨンをグルグルと歩き回る・・
あれは素晴らしい体験だった。タ・プロムですでに十分度肝を抜かれてたけど、アンコール・トムに来て
ますます驚きは増した。アンコール遺跡ってこんなにスゴいものだったのか。ちょっとシャレた表現を使えば
イ課長は「アンコール遺跡という石の密林に初めて足を踏み入れ、そして酔いしれた」という感じか。

しかし巨大岩山のようなバイヨンから地上に降りると、そこにまた素晴らしい見ものがある。
それは何かっていうと、レリーフなんだよ。

すでにアンコール・ワット第一回廊の記事を読んだ方は「またレリーフぅ?」と思うだろう。
確かにあそこでもイ課長は大いに感動した。しかしバイヨンの近くのレリーフを見たときは
別の意味でまた深く感動したのだ。

位置的にどこ、と詳細に説明できなくて申し訳ないんだけど、とにかくバイヨンから降りてきた我々を
ガイド氏は華麗な浮彫りレリーフが彫られた大きな壁が連なる場所に案内してくれた。
アンコール・ワットの第一回廊みたいに屋根がある場所じゃなく、屋外にあるレリーフなのである。

屋外にあるせいか、こんな感じで(おそらく)水の浸み込みのせいで変色しちゃった箇所もあるけど、
保存状態はなかなか良くて、細かい部分の細工までよく見える。アンコール・ワット第一回廊と同様に
すごく稠密な構図のレリーフになってる。これは何かの出陣風景っぽい。
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こっちも左から右に行進する人や動物がミッシリと描かれてるけど、こんな風に二階建て構図に
なってるから、アンコール・ワット第一回廊と同様にすごいボリューム感。
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見学の順番は実際にはアンコール・トム⇒アンコール・ワットだったけど、実際に建設された順序でいうと
アンコール・ワット⇒アンコール・トムの順番になる。同じ12世紀で、時期的にさほど離れてないけど
様式としては先に作ったものより後に作ったものの方がより洗練されたものになるのが普通だ。

そう考えながら見ると、レリーフの動物、特にウシやゾウの描き方が力感あふれて見事だ。この辺から
例によってイ課長はまずレリーフの出来に感心し始めた。
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こういう壁が次から次と現れるんだからすごいボリューム感だ。この辺の感じはアンコール・ワットに
通じるものがあって、その迫力とボリューム感にイ課長はだんだん興奮し始めた。
 
しかし、イ課長が最終的に感動するに至ったのはガイドさんが説明してくれた小さな部分を見た時だ。
たとえばこれ。みんなが左から右に向かってゾロゾロ歩いている中で、二人の男が地面にしゃがみこんで
何かしてる。どうもこれって要するに「サボッてる」らしいんだな。酒だか何かを飲んでるトコらしい。
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アンコール・トムって、早い話がジャヤヴァルマン7世当時のクメール王国の首都の、その王宮なわけで
バイヨンっつうたら王宮の中心にある寺院だ。王様が建設を命じた、その国で一番立派な寺院の壁にだよ?
わざわざおサボリ野郎を彫るか?

下の写真のシーンにはさらに驚いた。
後ろにいる亀(スッポンみたいなもんかな?)が前にいる男の尻に噛みついてる図だもん(笑)。
噛まれた方は「痛ぇなヲイ!!」って思わずケツを手で押さえて後ろのオバさんに文句言ってる。
こういうおフザケというか、遊び心というか、「本来の趣旨と関係ないシーン」がいくつか
まぎれ込んでるんだよ。何度も言うが首都の中心にある最もエラい寺院の壁に、だよ。
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この説明をガイド氏から聞いてイ課長は感動した。
他の遺跡、たとえば古代エジプトでもギリシャでもローマでも何でもいいけど、首都中心の神殿の壁に
「男がスッポンに尻を噛まれてる図」なんておフザケを描く(もしくは彫る)ことがあり得るだろうか?
(どれも実際に見たことないから知らないけどさ)

アンコール・ワットの第一回廊にだって、乳海撹拌にしろラーマヤナにしろ全体が非常にドラマチックな
構図で統一されてて、こんな幕間茶番みたいなひとコマが入り込む余地はなかったと思う。そう考えると
アンコール・トムの「おサボリ飲酒」とか「スッポン尻噛み」のおフザケってスゴいことだと思うんだよ。
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とにかく、とても自由に楽しく作ってる感じなんだよね。このレリーフ。
ちょっとフザケたシーンを紛れ込ませた方が面白いじゃん。バレたって死刑やムチ打ちになるわけじゃ
ねぇんだし、彫っちゃえ彫っちゃえ!みたいな石工たちの楽しい作業ぶりを想像しちゃうんだよ。

もちろん、実際にはどういう経緯でこういうおアソビが彫られたのかはわからないんだけどさ。
しかし中央寺院の壁に彫られた壮大かつシリアスなレリーフの中に「バカバカしい日常」をちょびっと
だけ混ぜちゃうという、その“創作スタンス”にイ課長はひどく感心したのである。
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もちろんおフザケはごく一部まぎれ込んでるだけで、一見すればそれはもう壮麗なレリーフだよ。
こんなアプサラ(天女)も描かれてる。カンボジアの伝統舞踊を「アプサラ・ダンス」っていうけど、
あれはまさに天女の舞を地上で人間が再現してるってことなんだろうな。ただしレリーフに描かれた
アプサラたちの踊りっぷりは足をガバッと広げて、舞踊っつうより新体操の選手みたい(笑)。
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この後イ課長たちは車で昼食に向かった。だから広大なアンコール・トムの中にいくつもある
見どころのうち、バイヨンを含む一部しか見てこられなかったわけだ。しかし、それでも素晴らしかった。

こうして(書いた順序はバラバラだが)、タ・プロム⇒アンコール・トム⇒昼食⇒アンコール・ワット
⇒プノン・バケンで夕日 という一日ツアーは終わったことになる。
いやーー・・・ホントに、見れば見るほどもっと見たくなる、そんなトコだよ、アンコール遺跡群って。
こうやってあの時のことを思い返しながら書いてるだけで、もう一度行きたいという気分がモーレツに
強くなって、ちょっと困ってるんですが、イ課長は(笑)。

 

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by tohoiwanya | 2016-01-30 00:27 | 2014.09 ベト・カン・タイ旅行 | Comments(2)
Commented by Bきゅう at 2016-01-31 21:48 x
レリーフの酒飲み。暗に休憩が少ないことを訴えているのでは。イ課長さん、絶対にまた行くね。そーだなー。今年はきな臭いヨーロッパより、アジアのほうが安全かも〜。
Commented by tohoiwanya at 2016-02-01 13:59
>イ課長さん、絶対にまた行くね

Bきゅうさん:
うーーーん・・ワシもそんな気がする(笑)。
ただ今年はぎーんこーんツアーだからトホ妻の好み優先・・とするとやっぱ欧州の公算大。
耐熱性の低い妻だと、二人で行けるところが制約をうけて困りますな(笑)。
カンボジアは義兄弟もいるしなぁ・・やっぱもう一度は行きたいよなぁ・・。


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