2016年 02月 27日

国民感情というもの

さて、やっと2014年東南アジア旅行に話を戻そう。
本日はカンボジアとベトナムの間にあるフクザツな国民感情というシリアスなテーマを取り上げる。

地理的な隣国同士って、まず例外なく過去に征服したのされたのっていう歴史があるから
両国民の間にフクザツな感情がたまる。反日だ嫌韓だと言い合ってる日本と韓国もそうだけど
ベトナムとカンボジアの間にもいろいろある。遺跡観光ツアーのガイドさんから聞いた話の中にも
ベトナムにからんで「ええ?そうなの?」と思うことがあったので、書いておきたいのだ。
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たとえばアンコール遺跡群に入るための共通入場券。
1日券(20$)、3日券(40$)、一週間券(60$)の三種類あるって前に書いた
シェムリアップのマッサージ屋のお姉さんの一か月の給料が80$って言ってたことを考えれば
カンボジア的には超々高額チケットだ。

それでもアンコール遺跡に押し寄せる観光客は年間200万人。一人平均40$のチケット買うとして
入場料収入は8000万$≒約100億円。アンコール遺跡群の入場料収入はカンボジアの国家財政に
トテツもなく貢献してるはず・・と、誰でもそう考える。

ところがギッチョン。
ガイド氏は悔しそうな顔でこう言う。「おかねはみんなベトナムにとられちゃうんですよぉ~
えええ?カンボジアにある遺跡なのに、なんでベトナムがとっちゃうのさ?

あとで調べて驚いた。本当にそうらしいんだよね。
前に写真を載せた入場チケット。このチケットの左下にピンクの桜みたいなマークが
あることにご注目いただきたい。
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このSOKHA HOTELS っていうホテル・リゾート運営企業、実はベトナム系の会社なのだ。
アンコール遺跡入場券販売利権はこの会社が独占的に握ってるらしい。カンボジアに還元されるのは
収入の10数%(一説では100万ドル/年)程度とかで、あとはこの会社の売上になっちまうらしい。
だから遺跡の修復に使われるお金なんて、入場料収入のほんの、ほんの一部だけってことになる。
(主要な遺跡の修復は事実上、先進国からの援助に依存している)
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そりゃカンボジア人、ムカつくわなぁ。
さっきザックリ試算したように、アンコール遺跡の入場料収入は年間約100億円という規模。
仮にその1割、10億円をカンボジアに還元しても残り90億円はベトナムのもの。しかもその収入は
オレたちの国にある遺跡から吸い上げてるっていうんだから

自分の国の遺跡なんだから、入場券発行の利権なんてベトナム企業から取りあげて国営化すりゃ
いいのでは?と思うけど、経済的にも軍事的にも強いベトナム相手だとそうもいかんのかなぁ・・。
まぁね、カンボジア当局の中には甘い汁のおこぼれにあずかるのと引き換えに、ベトナム企業に
便宜を図ってる人間がいることも十分想像されるが。
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イ課長がシェムリアップに来るのにアンコール・エアを使ったっていう話をしたら、このガイド氏、
またまた悔しそうな顔をしてこう言う。「あれだってベトナムの会社ですよぉ~
えええ?!ホントなの?
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これまた調べてみると、アンコール・エアの出資比率はカンボジア政府51%、ベトナム航空49%だと。
出資比率ではかろうじてカンボジアの方が過半を占めてるけど、カンボジア政府に航空会社運営の
ノウハウなんて皆無なのは明らかだ。実際にはベトナム航空に牛耳られてる可能性は高い。
うーーーむ・・・

以前に書いた「予習」をちょっと思い出してほしい。
ポル・ポト政権の恐怖政治からカンボジアを解放したのはベトナム軍の侵攻。
その後新たに作られたヘン・サムリン政権を世界は「ベトナムの傀儡」と見なした・・と書いた。

傀儡という表現が適切かどうかはともかく、ヘン・サムリン政権が当時カンボジアを実質支配してた
ベトナムの影響下で作られた“親ベト政権”だったのは間違いない。そして今のカンボジア首相の
フン・センという人はヘン・サムリン政権当時の外務大臣だった人・・ははぁ・・・ってことはだ、
今のフン・セン政権は依然として“親ベト政権”の延長線上にあると言っても間違いじゃないんだろう。

うーーむ・・・こういうことを知ると、ベトナムに対する鬱屈した感情がカンボジア人の中に溜まるのも
無理ないかななぁ・・と素朴に思う。アンコール遺跡の収入の大半がベトナムのものってのは、
さすがにそれはちょっと・・・と思ってしまうわけヨ。

ま、こういう問題はよその国の人間が見るほど単純なもんじゃない。
二つの国の間にはイ課長の知らない歴史的経緯ってヤツがいろいろあるのは間違いない。

実際、ポル・ポト政権の時には国境沿いのベトナムの村がクメール・ルージュに襲われて、
多くのベトナム人がこれ以上ないくらいヒドい殺され方をしたなんて例もあったし、その後の
ポル・ポト派との内戦でも多くのベトナム兵が死んでる。大体だなぁ、ポル・ポト支配から解放されて
今のカンボジアがあるのは誰のおかげだと思ってんでぃッ?と、ベトナム側にすりゃそういう思いがあるだろう。
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どっちかの肩を持つつもりはないし、イ課長はベトナムもカンボジアも両方好きで、
どちらの国にもまた行きたいと思ってる。

でもさぁ、経済発展著しいベトナムは今や一人当たりGDPじゃ軽くカンボジアの倍、総額で比較したら
カンボジアの10倍以上だぜ?両国の経済力は水鉄砲と大砲くらいの差があると言っていい。
言い換えればカンボジアって国はそんだけ貧しいわけさ。街の「都会度」にしたって雲泥の差だもん。
サイゴンはもうすぐ地下鉄ができるけど、プノンペンに地下鉄なんて22世紀になってもできるかどうか・・。

なぁ、ベトナムのお兄ぃさんたちよ。そりゃま、過去にいろいろ遺恨があるのは重々承知してるけどよゥ、
ここは一つ度量の広いとこ見せちゃぁくれねぇかなぁ?アンコール遺跡群の入場料収入ぐれぇはそのまま
カンボジア野郎どものフトコロに入れてやるってわけにゃいかねぇかい?なぁ、ベトナムのお兄ぃさんたち、
おめぇさんがたを男と見込んで、あっしからもお願ぇしやすよ。

 
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by tohoiwanya | 2016-02-27 00:06 | 2014.09 ベト・カン・タイ旅行 | Comments(2)
Commented by ふじっこ at 2016-02-27 23:25 x
こんばんは〜

アンコールワットの入場料がほとんどベトナム企業の売り上げになっているなんて!驚きです!!支払っている観光客の殆どが知らないと思います。。。

遺跡とかの入場料って、世界中何処でも高いな〜って思いますが、遺跡の保護、修復、維持管理に使われるんだろうなってことで、大半の観光客が納得して払っていると思うんですよね。。。

企業の利益なんかじゃなく、もっと遺跡の保護とか、カンボジアの発展のために役立ててほしいなぁ。。。
Commented by tohoiwanya at 2016-02-29 01:05
>遺跡の保護、修復、維持管理に使われるんだろうなってことで、大半の観光客が納得して払っていると思う

ふじっこさん:
ですよねぇ~?誰だってそう思いますよねぇ~?
私もあのガイド氏から「お金はベトナムが持ってっちゃう」って最初に聞いた時は
「うそでぇ」と思ったんだけど、「アンコール遺跡 入場料 ベトナム」あたりのキーワードで
いろいろ検索してみると、その辺の情報がいくつかのブログに出てきたんで、
「うわホントだったのか」と思って驚いた。まぁ政治的その他いろいろ理由はあるんだろうけど、
カンボジアにある遺跡からあがる収益は単純にカンボジアのものでいいじゃん・・と、これまた
誰でも思うんじゃないかなぁ・・?


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