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2014年 07月 20日

ゲントの祭壇画 -神秘の子羊-

ゲントで行きたいと思ってた屋内観光物件。それはある教会が所蔵する祭壇画なのである。

以前にルーブル美術館の記事にも書いたけど、イ課長の美術的教養の大部分は
NHKの「ルーブル美術館」シリーズと朝日新聞の「世界名画の旅」シリーズで形成されている。

その「世界名画の旅」でゲントの祭壇画、別名「神秘の子羊」という絵を初めて見た。
宗教画だから内容はよくわかんないんだけど、とにかく保存状態が良いせいか異常に色が鮮やかで、
描かれているもののディテールが異常に細密で、要するに「何だかわからんが異常にすげぇ」っていう、
そういう印象の絵だったんだよ。ファン・アイク兄弟が15世紀に描いたとされる。

フランドル絵画の傑作中の傑作と言ってもいいこの祭壇画はゲントの聖バーフ教会に所蔵されている。
せっかくゲントに来たんだから行ってみようじゃないの。下の写真右側が聖バーフ教会。入場は無料だけど
教会には特に見るべきものもなくて、祭壇画は別室に展示されてる。こちらはさすがに無料ではない(笑)。
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ファン・アイク兄弟の話をするために、先に別の絵のことに触れよう。
この兄弟、とにかく絵が上手だったんだけど、特に弟のヤン・ファン・アイクは「神の手を持つ男」と
言われたほどの技術の持ち主で、彼が描いた有名な絵に「アルノルフィニ夫妻の肖像」という絵がある。
「ああ、この絵は見たことがある」という方も多いだろう。
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この絵も絵画史上の傑作中の傑作と言われてて、特にヤンの異常なほどの細密描写技術の例として
よく引き合いに出される。この夫婦の真ん中にギザギザのついた小さな丸い鏡があるじゃない?
この小さな鏡を拡大するとだ・・・
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こんな具合に実際に凸面鏡に映った部屋、モデル、絵を描いてる自分自身まで描き込んでるから驚く。
鏡自体に施された装飾の細密な描写も「そこまで描くか?」ってくらい細密。昔から思ってるんだけど、
こういう人間業とは思えないくらい精密にリアルに描かれた絵って、逆に幻想絵画に近づくよね。

こういう異常な技量を持った画家が、その異常な技量を余すところなくつぎ込んで描いた祭壇画。
さぁそれではご一緒に鑑賞・・と言いたいところだが、中は撮影禁止なので、Wikipediaにあった画像を
拝借させていただこう。
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祭壇画は大きなガラスケースの中に納められてて、表も裏も鑑賞できるようになってる。
(裏側には、ちょうど祭壇画のフタにあたる部分の絵があって、これがまたスゴいんだ)
細部をご覧いただくにはこのサイトがいい。どんどん拡大して見てごらん?ちょっとびっくりするよ。
ハッキリ言ってこの祭壇画、拡大して見ないとそのスゴさはわからないのだ。

上段中央の「父なる神」が胸にかけてる宝石の飾りなんかは得意の光沢描写テクニックが
ふんだんに使われてる。ヤン・ファン・アイクくらい異常に絵が上手になっちゃうと、こういう
「光沢を放つ宝石」みたいな得意中の得意といえるモチーフは居眠りしてても描けたんじゃないかと
思えちゃうよね。細部を精密に絵画として再現することにかけちゃまさに天才だった。
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下段左の騎士たちの甲冑の光沢表現もまたお手のものって感じだけど、油絵の歴史においては
こういうテクニックこそまさに革新的技法だったらしい。
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上段左寄りの聖歌隊がまたすごい。服の刺繍や宝石の細密描写のスゴさはいつものことだけど、さらに歌い手の
歯や舌の位置まで正確に描かれてて、誰がどのパートを唄っているのか推測できそう、とすらいわれてる。
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上にも書いたように、普通の距離から実物を見ただけじゃここまで細部はわからない。
この拡大可能サイトの絵を見て、改めて「うわぁすげぇ絵を見たんだなぁオレは」と思ってるところ(笑)。
細部を観察したい場合、双眼鏡とか持ってって見るっていうのも一つの方法かもね。

バーフ教会の外にこの祭壇画を描いたファン・アイク兄弟の銅像がある。
雪が積もって寒そうだけど、まぁとにかく大した兄弟だったよキミたちは。
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ちなみに、このゲントの祭壇画はいま段階的に修復してるそうで、そのスケジュールは以下の通り。

2012年10月~2014年10月:祭壇画の扉部分、外側のパネル
2014年10月~2016年4月:祭壇画内側、上段部のパネル。中心部「父なる神」を含む。
2016年4月~2017年10月:祭壇画内側、下段部のパネル。中心部「神秘の子羊」を含む。

イ課長が行ったのは2013年2月だったから、主要部分は修復前で実物を見られたわけだ。
内側の上段・下段、「父なる神」や「神秘の子羊」はこの祭壇画のキモだから、これを見たいという方は
今年10月までにゲントに行くか、さもなければ2017年11月まで待った方がいいのかもしれない。


 

by tohoiwanya | 2014-07-20 00:14 | 2013.02 欧州出張 | Comments(4)
2014年 01月 05日

生神女就寝大聖堂の少女漫画風壁画

さて、ヘルシンキネタ消化に戻ろう。
それにしても今日の標題は漢字が多いなぁ~(笑)。

生神女就寝大聖堂。読み方もよくわからなかったんだけど、さっきWikipediaで確認した。
「しょうしんじょしゅうしんだいせいどう」と読むらしい。

生きた女神が就寝している大聖堂・・・?なんだソレ?と思う人もいるはずで、イ課長もそう思った。
想像したのはタイやビルマの「寝釈迦」みたいに、女神様がゴロリと寝てる巨大像があって、
それが信仰を集めている大聖堂なのだろうということだ。他にどんな解釈が可能だというのだ?

ヘルシンキについては事前の研究もズサンだったんだけど、とりあえずガイドブックだけは持ってった。
その中にこの生神女就寝大聖堂というのがあったんだよ。
例の4ブラザースに挨拶し終わったイ課長、さてどこに行こうかと考えて、ここのことを思い出した。
寝釈迦ならぬ、寝女神の像があるのかなぁ?と思って、トラムに乗って行ってみることにしたのである。
中央駅からの距離はそんなに遠くない。

これが外観。なかなか立派な建物だ。
「寝女神さま」はこの建物の中にあるんだろうから、さっそく中に入ってみようじゃねぇか。
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これが内部。これまたなかなか立派だ。
しかし、「寝女神さま」はいないみたいだねぇ・・・。
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結論から言うと、この聖堂で寝ている女神様はいなかった。
「眠れるヴィーナス」みたいなセクシーな巨大女性大理石像でも見られるかと期待してたんだが(笑)。

ちょっと調べたところでは、ここってロシア正教会とかギリシャ正教とか、とにかく「正教系」の聖堂らしい。
カトリックやプロテスタントとはちょっと流派が違うようで、ここでいう「生神女」はマリア様、「就寝」は「永眠」を
表すらしいんだよね。カトリックなら「聖母被昇天大聖堂」っていう訳語になるらしいんだけど、「正教系」だと
それがどうして「生女神就寝大聖堂」になるのかはわからない(もっと調べろってば)。

この聖堂で「ありがたい」とされているのは、むしろこの祭壇のようで、確かに豪華絢爛なものだった。
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ただ、イ課長がこの大聖堂で一番面白かったのは壁画に出てくる聖人たちのお姿だ。
やけに目がパチッと大きくて、早い話、少女マンガ的なジイさんたちにみえてしょうがない。
たとえば、ほら、これとか。
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これも。やたら「美ジジイ」な聖人だよね(笑)。
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これなんかもそう。同じ画家が描いているのは明らかで、ヒゲや頭髪の形、服装以外はどれも同じ顔じゃん。
要するにこの画家は人間を描くときは、基本的にこういう顔にしか描けないという“画風”のようだ。
「宗教壁画界のキャプテン翼」というべきか。
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これも同じ画家の、同じ画風による聖人。横顔にもかかわらず、目だけは正面から見たような感じで描かれてる。
「横顔でも目は正面」って、古代エジプト壁画なんかと同じ画法だ。すげぇ。
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巨大な「横たわる女神」はいなかった生神女就寝大聖堂。
そこで一番印象に残ったものは、結局この少女漫画風聖人さんたちの壁画だったのである(笑)。

聖堂を出ると、駐車場の観光バスの向こうに船が見える。港が近いんだよな。
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ちなみにこの観光バス、「イ」の字が抜けてるけど、「バイザイ号」という名称らしい。
日本人ツアー客専用のバスなのであろうか?さすが東アジアからの観光客誘致に注力するフィンランド。
日本語の名前がついたバスなんてポーランドじゃ想像もできんかったが、ヘルシンキにはあるんだ。
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さて、少女漫画風壁画も撮ったし、バンザイ号も撮ったし(いいのか、そんなんで?)、天気はいいし、
ぶらぶらと港の方に歩いて行ってみようかね。

イ課長のお気楽なヘルシンキ観光はまだまだ続くのである。
 
 


by tohoiwanya | 2014-01-05 22:22 | 2012.06 東欧・北欧旅行 | Comments(8)
2013年 04月 26日

アントワープ決めゼリフ

なんと二日連続更新ときた。素晴らしいではないか。
続きものだとね、続編プレッシャーかけてくるヤカラもいてね、なかなか大変なのヨ(笑)。

さて、とにかく前回の続きだ。アントワープに来て「絶対にすべきこと」をする。するったらする。
アントワープを訪れた日本人なら必ず成し遂げなければならない、神聖なるミッション。
「あの教会」の「あの絵」の前で、「あのセリフ」を言わねば(・・・あ、もうバレバレ(笑))。

まず「あの教会」。それはアントワープにあるノートルダム大聖堂(聖母大聖堂)に他ならない。
市の中心部にあって、高い塔があるから、これは初めての旅行者でも見つけやすい。
ブラボー像のある市庁舎前広場からだとすぐ近くだよ。
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次に「あの絵」。「あの絵」とは、ノートルダム大聖堂が所蔵する、ルーベンス作「十字架降架」だ。
さっそく大聖堂の中に入って探す。どこだ?おそらく祭壇に近い奥の方だと思うんだが・・・

ぎく!おお、あれは「十字架昇架」だ。
この大聖堂にはルーベンスの「十字架昇架」と「十字架降架」がセットで置かれているのである。
ドキッとするじゃねぇか。
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うーむ、しかしこの「十字架昇架」もなかなか見事な絵だよなぁ。
ルーブルじゃ相当ひどいこと言ったけど、この「昇架」「降架」の2枚セットはルーベンスらしい
ドラマティックな構図がうまくハマッてて、彼の作品の中では傑作の部類だと思うんだよ。
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だがとりあえず、いまは「昇架」じゃなく、「降架」の方を探さねば。どこだ?
見学者の少ない大聖堂の中をうろうろ歩きまわるイ課長。

うおおおおお。あったありました十字架降架。ついにこの目で見られたか。
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よし。では「あのセリフ」を言う態勢を整えよう。
絵を前にして・・・この辺りに座って・・・位置的にこんなもんかな。少し見上げる感じで・・
それではみなさん、「イ課長」のところをご自分の名前にして、一緒に「あの決めゼリフ」をご唱和ください。









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今さらご説明するまでもないが、「フランダースの犬」のラスト、ネロ少年が息をひきとるのは
ここ、ノートルダム大聖堂に飾られた、ルーベンスの「十字架降架」の絵の前なのである。
ひとえに「フランダースの犬」のせいで、ここに来る日本人観光客はものすごく多い。

え?そんなバカなことするのはイ課長くらいだって?ふふふ、そんなこと言っちゃっていいのかな?
少なくとも、このノートルダム大聖堂に来る観光客の中で日本人比率が異常に高いことをイ課長は
容易に証明できるのだ。ほら、この主要国語別パンフレットの量を見てみ?
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地元のオランダ語版ですら3列だよ?フランス語版なんてたった2列しかない。ところがドウよ、
日本語版だけ4列も置かれてる!これにはイ課長もブッたまげた。日本人、よ~っぽど多いとみえる。

「フランダースの犬」の原作は地元じゃほとんど知られてないらしいけど、日本では局所的に人気が高い。
特に「カルピスまんが劇場」で放映されたアニメ版が、その悲しいエンディングによって当時の少年少女に
深刻な悲劇体験の記憶を植えつけたのは有名な話だ。
ちなみに、上のセリフ。アニメ版最終回のセリフとしてあまりにも有名だけど、正確には
「もう疲れたよ」っていうのとはちょっと違うらしい。ま、どうでもいい話だが(笑)。

あの最終回に涙した当時の小学生くらいの少年少女が、今や40・50のオジサン・オバサンになり、
遠い日本から続々とこのアントワープの大聖堂に押し寄せ、この絵の前で、あのアニメを思い出して、
目をウルウルさせてるのは間違いないんだよ。あのパンフレットの量が雄弁にそれを物語っておる。

アニメ放映当時、イ課長はもう中学か高校生くらいだったはずで、カルピスまんが劇場を見るトシではなかった。
そのイ課長でもアントワープに行ったら、ぜひルーベンスの絵の前で「パトラッシュ・・・」と言わなくちゃ、って気に
なるくらいだから、日本のアニメ史上最も有名なセリフの一つといってもいいんだろうな。

しかし、ここに来てアニメの話ばかりするのもまた日本人だけに違いない(笑)。
一応、絵のことにも触れよう。さっきも言ったように、この絵はルーベンスの作品では傑作の部類だと思う。
祭壇をはさんで左側に「昇架」、右側に「降架」が置かれてるんだけど、昇架では光の当たったキリストの体が
右下→左上に、降架では右上→左下というナナメ構図に置かれてて、祭壇をはさむと「逆ハの字」を構成する。
さすが巨匠ルーベンス。この辺の視覚効果をしっかり計算しているのだ。
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もし、この絵が修復中か何かで、「ネロとパトラッシュごっこ」が出来なければ大変な失望を味わっただろうが、
ちゃんと見られてよかったよかった。お礼がわりに、毎度おなじみ、寄付ロウソクをともすことにしよう。
(一番奥の、高くなってる列の右端がイ課長ロウソク)。
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「アントワープで絶対にすべき」ミッションは無事終了した。
いやぁ〜、心が洗われたようにすがすがしい気分だ(笑)。
さて、まだ時間はあるし、もうちょっとアントワープという街をのんびり探検してみっか。
(アントワープネタ、まだ続くようだ)

 


by tohoiwanya | 2013-04-26 00:08 | 2012.03 欧州出張 | Comments(12)
2013年 02月 18日

コメルス・サンタンドレ小路に行く

2012年3月出張の時のブリュッセルの話が続いたが、理由もなく場所と時間は飛ぶ。
本日は2011年11月出張のパリネタ。この出張ン時のネタもまだけっこう残ってんだよなぁ。
そもそも、イギリスに入ってからの話を全然書いてないし。

まぁいい。とにかく本日はパリネタ。
芸術の都らしく、美術がらみのお話なのである。

ルーブル美術館シリーズを書いたときにちょっと触れたけど、イ課長の美術的教養は
その大半がNHKの「ルーブル美術館」と、朝日新聞の「名画の旅」で形成されている。
ルーブルに行ったときは特に前者の影響が炸裂したわけだけど、せっかくのパリ滞在だから
後者に関するヲタク趣味を満足させるプランもちゃんと用意していたのである。

バルテュスって画家をご存知の方はいるだろうか。
イ課長は「名画の旅」で知るまではバルテュスなんて画家は聞いたこともなかった。

わりと最近亡くなった人で、要するに現代画家。描く対象は特に奇をてらったところがなく、
普通の風景や人物を描いてるんだけど、画風が独特で、ちょっと幻想的。
イ課長なんかはこの人の絵を見ると、ちょっとスーラの点描絵画を連想することがある

バルテュスの代表作とされる絵に「コメルス・サンタンドレ小路」っていう絵がある。
これが「朝日・名画の旅」で紹介されてたんだよね。
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特に変わったものを描いた絵じゃないんだけど、なんか変わった絵でしょ?
この「コメルス・サンタンドレ小路」っていうのはパリに実在している場所で、「名画の旅」では
同じ場所の今の姿を写した写真も小さく紹介されていた。
うーむ、この場所が残ってるなら、ぜひ行ってみたいものだ。

それから、コメルス・サンタンドレ小路がパリのどこにあるのか、オニのように調べまくり、
左岸にあることを発見した。パリ中心部といっていい場所だ。地図をプリントアウトしておき、
当日はそれを持参して、万全の準備でコメルス・サンタンドレ通りに向かったである。

入念な準備のおかげで、コメルス・サンタンドレ小路の入口はわりとすぐに発見できた。
こんな感じで、トンネルになってる。実はここ、ちょっとしたパサージュみたいな通りで、
すごく歴史のあるカフェなんかもあるらしい。「あの絵の場所」としてより、どちらかというと
パリの歴史を感じさせるスポットとして知られているようだ。
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中に入るとこんな感じだ。うーむ、確かに歴史を感じさせるたたずまいだ。
道自体はそんなに長いものじゃない。あの絵のアングルを探してキョロキョロしながら
歩いてるうちに、すぐに反対側の入口に出ちまった。ありゃ?
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こっち側の入口もアッチ側の入口もトンネル構造。しかし絵にはトンネルなんてない。
一体この絵はドコからドコを見て描かれたものなんだ?こんな狭い通りに、あの絵の
アングルがあるようには見えなかったけど・・・。
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もう一度絵を見てほしい。突き当たりにある道は明らかに左から右に登る坂道だ。
しかし、そんな傾斜のありそうな道はあたりに見当たらないんだよなぁ?
バルテュスはこの道そのものじゃなく、近くの裏通りとかを描いたんだろうか?
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せっかくパリのコメルス・サンタンドレ小路まで来たのに、絵のアングルが見つけられないという
ガッカリを受け入れようか・・・と思い始めたその時、やっとわかった。ほら、ここだったんだよ。
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この右側のレストランがいけないのだ。こんなモノがあるから「ここは違う」と思うじゃないか!
このレストランに面したワキ道からコメルス・サンタンドレ小路を見ると、この絵のアングルになる。

左にある建物の窓枠なんて絵と全然変わってない。
奥の道は確かにかすかに傾斜してるんだろうけど、ここは実は直角に交差してなくて、ちょっと
ナナメになってるから、余計に坂道っぽく見えるんだろう。

以前にパサージュ・コタンの記事を書いた時もそうだったけど(あれも実は朝日・名画の旅の影響)、
「画家はまぎれもなく、今自分が見ている光景を絵に残したのだ」っていう場所に実際に立つのは
けっこう感激の体験だよね。右のレストランがなきゃもっと嬉しいんだが…(笑)。

ここに行ったのは、パリ滞在中にポストイット・アートを見たり、ラップ街29番地アパートを見たり、
「健全な観光客なら絶対わざわざ行かないところ」に行きまくった、あの日曜日のことなのである。
マニアック観光に明け暮れたパリの休日。しかしコメルス・サンタンドレ小路で「あの絵」の場所に
立つことができたイ課長はけっこうゴキゲンだったのでありました(笑)。


 

by tohoiwanya | 2013-02-18 00:28 | 2011.11 欧州出張 | Comments(2)
2012年 12月 12日

ラップ街29番地のアパート その2

さて、前回クイズの正解を発表します。


・・・っていっても、もうみなさま重々よくご承知のようですが(笑)。
この入口がヒワイでワイセツでエロであるわけを一応確認しておこう。
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中央の扉をよく見てほしい。

扉の上の方、左右に一つずつ楕円形の装飾があるのがわかるよね?
この二つの楕円が要するにその・・・まぁ早い話、キンの玉ってわけですよ。

これがキンの玉とわかれば、あとは早い。その下に・・・続いてますね、ティム○が。

で、その先端、ドアの一番下の部分が・・・はいそうです。そういうことなんです。
もう一度、少し寄った写真で確認してみましょう。
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そう言われると、もうソレにしか見えないよね(笑)。
しかしイ課長も言われる(というか読む)まではマッタク気づかなかった。
これを一目で見抜いたとすれば、やっぱダリはすごい。

しかし、ラヴィロット氏もまた別の意味ですごいヒトだと思うよ。
よくまぁこんな入口を作ったもんだ。このアパートの住人は毎日このワイセツな
扉をあけて出入りしてるわけだよなー…。

ちなみに、この入口が女性の秘所をあらわしてるとも言われるけど、それは
全体的な・・・その・・・感じというか、左右にモワンと広がったカーブが
ソレを「思わせる」ってだけで、ドアのティ○ポほど露骨には表現されてないよね?

それとも、イ課長が気づいてないだけ?
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上品・高潔なことで有名なイ課長ブログだが(ほんとかよ)、
まぁ時にはこういうネタを扱うこともあるのだ。みんなラヴィロット氏が悪いのだ。

さて、建物の裏に行ってみよう。
このラップ街29番地のアパート、裏にもう一つラヴィロットの作品があるんだよ。

入口はいかにもさっきのワイセツ扉と同じ人のデザインって感じだ。
しかし、こっちは(おそらく)抽象模様で、ワイセツ性はない(んだと思う)。
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裏の建物の見どころはむしろ、この壁に作られた線画の「だまし絵」かも。
一体なんの意図があってココにこんなものを作ったのか?
単にラヴィロット氏の気まぐれな遊び心の産物?ミョ~だよなぁ。
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このラップ街29番地のアパートは「パリ・日曜マニアックツアー」の中でも
ぜひ見たかったものだから、しばしアパートの前に佇んで何枚も写真を撮ってた。

そのうち、うしろのラップ通りがにぎやかになってきた。
何かと思ったら、うーーわーーーおウマさんの大行進だ。何の催しなんだろう?
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すごく長大な馬列で、通過に要する時間も長い。
その間、イ課長はずっとおウマさんと、ラヴィロットの作品を交互に眺めてた。
しかしまぁパリってとこも、いろいろ見るべきものの多い街だぜ、まったく(笑)。

面白かったのは、このおウマパレードの関係者の中に、パレードを抜け出して
このワイセツ入口の写真を撮って、またパレードに走って帰る人たちがいたことだ。
警備のお巡りさんにも写真撮ってる人がいたくらいで、このラップ街29番地のアパート、
実はパリっ子の間でもけっこう有名な建築物みたいだ。
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当然のことながら、パレードの間中、ずーっとウマのヒズメの音が冬のパリの大通りに
パカポコとこだまして楽しかったね。
今でも、このアパートの写真を見るたびに、響きわたっていた馬のひづめの音が
条件反射的に幻聴で聞こえてくるよ(笑)。
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ラップ街の、このあたりからはエッフェル塔がすごく近くに、キレイに見える。
どれ、見たかった「隠れエロ建築」もたっぷり見たことだし、エッフェル塔でも散歩すっか・・・

出張の合間、街もイ課長ものどかなムードの、パリの日曜日なのでありました。

 
 

by tohoiwanya | 2012-12-12 12:22 | 2011.11 欧州出張 | Comments(2)
2012年 12月 10日

ラップ街29番地のアパート その1

大丈夫。「その1」とは書いたけど、これは必ず「その2」で終わらせるから(笑)。

ムンバイから浅草、そして話はパリへと移る。
例によって世界を飛翔するイ課長ブログなのである。

2011年11月欧州出張、パリで迎えた日曜日。
ポストイット・アートを見に行ったり、インドパサージュでカレーを食ったり、
健全な観光客は行かない、いささかマニアックな場所ばかり見に行った、あの日曜日の話。
見に行った「モノ好きスポット」はもちろん上の二つだけじゃない。
他にもヘンなとこに行った。その一つがラップ街29番地のアパートなのである。

「ラップ街29番地のアパート」と聞いただけで、もしもアナタがピンと来たら、
アナタは西洋建築、それもかなりヘンチクリンな方向の西洋建築がお好きな方と
推測される。イ課長自身、ややその傾向があることは認めざるを得ない(笑)。

ラップ街29番地のアパートって、ジュール・ラヴィロットっていう建築家が作った
アパートなんだよ。

このラヴィロット氏、フランスのアール・ヌーボー建築ではあのギマールと並んで
巨匠といわれたらしいんだけど、今となってはやや「忘れられた存在」に近い。
ギマールのデザインが今でもパリのメトロの入口に残ってるのに比べると、
現代における評価の差はかなりあるんだろう。

だがイ課長は数年前、このラヴィロット氏が作ったラップ街29番地アパートの写真を
本で見てタマゲたんだよ。うああ、なんだこりゃぁ?!と思って、強烈に印象に残った。
とにかくかなりのシロモノで、パリに行ったらぜひ見たいと思っていた。

というわけで、朝イチでポストイット・アートを見た後、メトロに乗って
次に向かったのはラップ街29番地というわけだ。

地図を見ると、ラップ街(またはラップ通り)はセーヌ川にかかるアルマ橋から
南に伸びてるから、アルマ橋に一番近いメトロの駅で降りて歩くことにした。

ほぉ。地上に出るとエッフェル塔がよく見えるじゃん。
こうやって、晩秋の枯れた木々の向こうに見えるエッフェル塔もまたいいねぇ…。
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通りを南に向かって、左側の歩道を歩く。
事前にGoogle Mapで入念に調査し、例のアパートはコッチ側にあることは確認しておいたのだ。
だんだん近づいてるはずで、少しドキドキしてきたぞ…。
おお、もうあの辺じゃないか?もうそろそろのはずだぞ?
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うぉっと、ついに来ましたラップ街29番地アパート。
まずはその入口の全貌をご覧いただこう。
なんといっても、このアパートは入口のスゴさで有名なのだ。
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アールヌーボー的(と言うんだろう、たぶん)意匠をメッタヤタラに押し込んだような
この正面入口。耽美的っつうか、退廃的っつうか…もちろん「悪趣味」という評価もある。
しかし、バロック教会的キンキラキンの装飾過剰にはヘキエキするイ課長も
この建物には非常に興味をひかれる。
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入口の扉はアールヌーボーっぽく抽象的な曲線でデザインされてるけど、その周囲には
トカゲだの、カメだの、ウシだの、やたら写実的な造形がちりばめられてる。
いやーーー、実に異様だ。視覚的インパクトだけはあるってヤツだな(笑)。
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珍しく、ここでイ課長ブログ読者にクイズを出そう。

この正面入口のデザイン。実はすごくヒワイなのです。エロなのです。ワイセツなのです。
大画家サルヴァトーレ・ダリはこの入口を見て、すぐにそのヒワイ性に気付き、
「欲望が具現化したようだ」と評したといわれている。
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ラップ街29番地アパート建物正面。どうしてヒワイでエロでワイセツなのでしょうか?
アナタの考える仮説どしどしコメント欄にお寄せください。



わ か る か な ~?


 

by tohoiwanya | 2012-12-10 00:08 | 2011.11 欧州出張 | Comments(8)
2012年 11月 25日

夜のルーブル3時間一本勝負 その6

さぁ、今日で最後だぞルーブル。何がナンでも今日終わらせる。
一つのネタで「その6」まで行ったのはシェルブールの町に行ったとき以来だな(笑)。
「最終回大放出」ってことで、今までご紹介してない作品をガバッと載せちゃおう。

とにかくもうルーブルって恐ろしいところでさ、「疲れてきたなぁ…」と思いながら
ダルい足を引きずって歩いてるのに、ソコここにぎゃあ!と言いたくなる絵が次々現れて、
そのたびに、疲れきったイ課長の体内でアドレナリンが強制分泌させられる。
こんなトコに半日いたら死ぬ(笑)。

たとえばフラッと入ってみた展示室…ぎゃあ!ゴヤだ!
これはえーと…ナニ夫人の肖像画だったっけ?細面の、ちょっと病弱そうなモデルだ。
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おおおおお!こっちにゃレンブラントの自画像が!。
この頭巾みたいなのをかぶった老境の自画像は世界自画像史上に残る傑作として名高い。
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目を転じれば、同じレンブラントの名作「バテシバ」もある!これもルーブルにあんのかよ。
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この絵、バテシバの裸婦像自体はちょっとオナカもたるんでて、美の極致という感じでは
全然ないんだけど、その分やけにリアルで、「オレの女になれ」という王様からの召喚状を
受け取った女の、諦めとも放心ともつかぬ表情もまたやけにリアル。何ともいえない絵だ。
レンブラント屈指の名作の一つと言っていい。

いつの間にか、ドイツ・フランドル絵画の展示エリアに入り込んだみたいだ。
ほら、フェルメールの天文学者もあるし。
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もう残り時間も少なくなって…いやそれ以上に、この頃にはイ課長はとにかく疲れてた。
すごく早起きして昼間はリールまで往復してきた後なんだぜ?そのうえ、ルーブルでは
イヤッてほど大量のアドレナリンを強制分泌させられて、ホルモンバランスも崩れるし(笑)。

「あとはザッと見て帰るか」とは思うんだけど、それでもやっぱり
「この先にはどんな絵がかかってるんだ?」と考えるとヨタヨタ歩いていってしまう。

うわーーー若きデューラーの自画像があるじゃん。これも有名だよなぁ。
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またまたNHKの「ルーブル美術館」の話で申し訳ないが、あの番組の北方ルネサンスの回でも
当然この自画像は取り上げられてる。ナレーションは大女優・奈良岡朋子さんだよ。

この絵のアップ画面、バックにあの奈良岡さんの声で「自分がやがてドイツ最高の画家と
呼ばれるようになるとは、彼はこの時思ってもいなかった…」みたいなことを言うんだよね~。

…てな具合に、「ああ、あの絵がここに」っていう驚きと感激は尽きることがないんだけど、
その中でもイ課長が最高にビックリした絵を最後にご紹介しよう。
「ひえーーーッ!これもルーブルにあったの?!」ていう嬉しい驚きナンバーワンだった絵、
それはこれだ。
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真ん中に女性の肖像画がある。描いたのは巨匠ハンス・ホルバイン。
モデルは目もくらむような美女…というほどじゃないけど、まぁ清楚で大人しそうで、
上品な貴族のお嬢さんっぽく見えるよね?まぁ実際それはその通りなんだけど…

だいぶ前に書いた、この記事をご記憶の方はいるだろうか?
もしお読みでない方がいたら、記事の前半をザッと読んでいただきたい。
この中でヘンリーが肖像画を見て美人だと思い込んだ「お妃4号」のことを書いてるでしょ?

これこそまさにその肖像画なんだよ!彼女はドイツの貴族の娘だったはずだ。
見合い写真代わりにホルバインが描き、ヘンリー8世が見て「おお、いいねいいね♪」と
欲情した(笑)アン・オブ・クレーブズの肖像画、それがコレだ。

大画家・ホルバインだけに、実物より相当カワイく描いたんだろうなぁ。この絵のせいで
縁談をセッティングしたヘンリー8世の重臣は首をチョン切られたっていうんだから、
まさに「歴史を動かした絵」といえる。てっきり英国のどこかにあるんだと思ってたけど、
ルーブルにあったとはなぁ~…いや驚いた…と同時に、嬉しかった。

ふう・・・まぁこんな感じでルーブルとの長い長い3時間一本勝負は終わったわけですよ。
この勝負、率直に言ってイ課長は完膚なきまでにヤラレたと言っていい。
ルーブルをやっつけようと思ったら半年くらいパリに移住しないと無理っすね。

10時閉館ギリギリまで見ようと思えば見ることは出来た。
でもさぁ、さっきも言ったようにこの日は早起きだったし、翌日はもっと早起きして
ド・ゴール空港に行かにゃならん。そろそろホテルに帰らないとな。
ルーブルも22時近くにもなるとホントに人が少ない。ちょっとセーヌ川の方に歩いてみた。

うーーむ…ルーブルとの戦いに敗れ、ボロボロになったイ課長を、魅惑的なまでに美しい
パリの夜景が慰めてくれるってもんだぜ。ちっくしょう…やってくれるよな、パリ。
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ルーブル、オマエをたっぷり堪能させてもらった…というには程遠い。
さらーっと表面をなでた程度の鑑賞だったのに、アドレナリンだけは強制分泌させられすぎて、
もう一滴も残ってないよルーブル。世界に名だたるオマエのスゴさには参ったぜ。
でも、もし許されるなら、いつかもう一度オマエとじっくり戦ってみたいと思うよ、イ課長は。
 
  

by tohoiwanya | 2012-11-25 22:33 | 2011.11 欧州出張 | Comments(4)
2012年 11月 23日

夜のルーブル3時間一本勝負 その5

ついに「その5」に突入したルーブル美術館とのタタカイ。

大まかに言って、イ課長の美術的教養の半分はNHKの「ルーブル美術館」シリーズで、
残り半分は朝日新聞社の「名画の旅」シリーズで形成されている。
大手マスコミに毒された男なのだ(笑)。

ルーブル3時間一本勝負に際しても、この二つの影響がイ課長の鑑賞行動に
色濃く反映されてるわけで、特にNHKの方の影響が強いのは致し方ないところ。
あの番組を見てなきゃ、今回の勝負はもう少し違った展開になったんじゃないかなぁ?

あの番組のバロック美術の回は、案内役がやっぱりシャーロット・ランプリングと
ダーク・ボガードのコンビで、冒頭まず「マリー・ド・メディシスの間」から始まる。
そもそも「マリー・ド・メディシスの生涯」っていうスゴい連作が存在することを
イ課長が初めて知ったのもあの番組だったのだ。

しかしこれがねぇ~…。
確かにバロック絵画を代表する連作ではあるんだろう。あるんだろうが、
描いたのがルーベンスだからねぇ~(笑)。

ド派手テンコ盛り絵画の巨匠・ルーベンスが描いた、ド派手テンコ盛り絵画の連作。
それだけで一部屋全部が埋まってるとなると、もう“そこだけド派手な異空間”というか、
ほとんど「ルーベンスランド」というテーマパークに近いんじゃなかろうか?(笑)
まぁそれはそれで、ルーブル美術館の重要な見どころの一つだ。ぜひ見ておきたかった。

おお、こんな感じなのか。絵はともかく展示室は意外にシンプルじゃん。
ゴテゴテした派手な絵を生かすために、逆に展示室の方はシンプルにしたんだろうな、きっと。
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マリー・ド・メディシスって、その名の通り、実はイタリアのメディチ家の娘で、フランスの
ナントカ王が持参金目当てで結婚した相手。フランス語もしゃべれずにフランス王家に
嫁入りし、やがて権力を握るようになるけど、最後は息子に失脚させられる。
要するに激動の一生を送った人なわけだけど、その激動の一生をド派手なルーベンスが描くと…

これはマリーの幼少時だな。お勉強してるよ。しかしそこはルーベンス。
ギリシャの神様たちがマリーに本を読ませたり音楽聞かせたりして家庭教師やってるぜ。
その後ろにはなんだか知らんが三美神がウッフン…いやぁ~シュールだ(笑)。
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これはマリーの見合い写真(絵画)をフランス王が見て「おお、いい女」ってことで
一目惚れしてるトコってことだろう。上にも描いたように、実際には持参金目当ての
政略結婚だったらしいけど、真実なんてどうでもいいのだ(笑)。お見合い写真を
見るときも周囲には神様やら天使やらがウヨウヨで、ルーベンス・タッチ全開。
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連作の中で一番有名なのはマリーが船でフランスに到着したところ。
船の下でバシャバシャと歓喜の水しぶきあげてる女神たち…うーん…スゴすぎる。
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NHKの「ルーブル美術館」でこの絵を前にした案内役のダーク・ボガードがこう言う。
どうだい?この女神たちのたくましい肉体・・まさにはちきれんばかりじゃないか。
 ・・・でも、マリーは僕の好みじゃないな


イ課長としてはマリーはもちろんだが、この女神たちもちょっとご遠慮したい…。

下の絵ともなると、もうマリーの生涯のどの場面なのか、知りたくもなくなってくる(笑)。
とにかくルーベンス一流の、過剰なほど派手な人物が、過剰なほどたくさん複雑に絡まった
ド派手な構図とド派手な色彩に圧倒されるばかりだよ…げっぷ。
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しかし、さすがはルーブルの「名物展示室」というべきか。見学客はけっこう多い。
こうやって床に座って模写?に励む人が多かったね。彼らにすれば、昼間は混んでるから
落ち着いた夜に来て、このド派手絵画の模写やら勉強やらするんだろう、きっと。
しかしキミたち、勉強するなら他の絵にした方がよくはないか?(笑)
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夜のルーブル3時間一本勝負。
この「マリー・ド・メディシスの間」を見終わった頃はすでに残り1時間を切ってたはずで、
あとはもうテキトウにふらふらと館内を見てまわることにした。
長かったこのシリーズも次回で完結させます。必ずさせます。はぁはぁ…。

 

by tohoiwanya | 2012-11-23 00:00 | 2011.11 欧州出張 | Comments(10)
2012年 11月 19日

夜のルーブル3時間一本勝負 その4

エジプト美術展示コーナーを目指し、再び早足で歩き始めるイ課長。

恐縮だが、ここでまたまたNHKの「ルーブル美術館」の話をしなければならない。
イ課長とトホ妻はあの番組の影響を受けすぎるくらい受けてるからしょうがないのだ。

あの番組の第1回目がエジプト美術の回で、デボラ・カーと、ナントカって俳優
(…と書く予定だったが、みゅげさんが教えてくれた。レイモン・ジェローム)が案内役を
務めたんだけど、あの回だけは、もう一人の重要な案内役がいた。

それが「書記座像」と呼ばれるエジプト彫刻の傑作で、書記座像の声を務めていたのは
今は亡き名優・宇野重吉。寺尾聡のお父っつぁんだ。デボラ・カーとレイモン・ジェロームが
書記座像と会話しながら話を進めるという、あの回の構成は非常に印象的なもので、
あれを見れば「宇野重吉が語りを務めた、あの書記座像」は忘れられない。

それがあるんだよ!この建物のエジプト美術展示ゾーンのどこかにある!
み、見る!這ってでも見る!見せろ!どこにあるんだ書記座像!(←ややヤバい状態)

ちゃんと館内案内図に「ここ」って書いてあって、それを見ながら歩いてるんだけど、
それでもなかなかたどり着かない。ルーブル広すぎます。

あった!ありました書記座像!うわーーーー。
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さっきも言ったようにルーブルの案内図にも「ここ」って書いてあるくらいだから、
これはルーブルのエジプト美術コレクションの中でも逸品中の逸品。
でも、イ課長はエジプト美術の神髄に触れたという純粋な感動よりも、どちらかというと
「宇野重吉が声を出してたあの像の実物を…」という、かなりNHKに毒された感動に
浸ったのは事実だ(笑)。いいだろッ!こういう思い入れはね、人それぞれなのッ!

それにしてもこのエジプト美術展示コーナーの陳列品の質・量はものすごい。
フランスはナポレオン時代にエジプト遠征してるから、エジプトの古代文物もゴッソリ
持ち帰ったんだろう。そのくせ、最も重要なロゼッタ・ストーンだけはイギリスにとられちゃって
ルーブルじゃなく、大英博物館にあるってところが笑えるが。
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ルーブル美術館に入ってから、この書記座像を見るまでが…どのくらいだったかなぁ?
1時間か1時間半くらい経過してたんだと思う。残り時間はそうたくさんはない。でも、
個人的にどうしても見たかった「サモトラケのニケ」と「書記座像」とご対面すれば、
あとは少し気持ちを落ち着かせて絵を鑑賞いたしましょうか。ふう… 

というわけで、また長い廊下を通ってさっきのフランス絵画があったあたりに戻る。
さっきは新古典主義・ロマン派を見たから、今度はこっちに行ってみようか…

ほほ〜、この辺はフランス絵画でもロマン派より少し前の時代、ロココとかバロックとかが
展示されてるみたいだ。当時を代表する人気肖像画家・ナティエの絵があるよ。
ちなみに、トホ妻はいつもこの画家のことを「おしろいのナティエ」と呼んでバカにしてる。
ま、イ課長も特に尊敬はしてないが(笑)。
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おおお、プッサンの「我アルカディアにもありき」だ。こっちの方はやや尊敬に値する。
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へーー、意外に小さい絵だったんだねぇ。画集でどんなに絵のディテールを研究しても
「絵の大きさ」だけは実物を見ないとわからない。でも、「絵の大きさ」って要素は
見た時の印象に相当影響するよね。

きゃーーー。シャンパーニュの「1662年の奉納画」だ。
実はこれ、個人的に好きな絵なんだよ。そうかー、これもルーブルにあったんだ。
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この、椅子に座ってる方の修道女は実はシャンパーニュ自身の娘なのだ。難病だったのが
左の方の修道女さまの祈りによって奇跡的に治ったっていうんで、パパであるシャンパーニュが
感激して絵を描き、奉納したというわけだ。
先日文化勲章をもらった高階秀爾さんがこの絵を解説したのを読んだことがあるけど、
あれがまた名文だったんだよなぁ。

うへ。フォンテーヌブロー派の一番有名な、女が女のビーチクつまんでる絵を見て
フランスのガキどもが美術の勉強してるよ。エッチな絵を教材にするんだなー(笑)。
ま、個人的にフォンテーヌブロー派はどうでもいいから、足早に通り過ぎる。
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うわーーー、ジョルジュ・ラ・トゥールの「マグダラのマリア」があるじゃないか。
これはどうでもよくない。ラ・トゥール得意のロウソクを使った明暗効果が際立つ名作だ。
同じラ・トゥールの「いかさま師たち」もあるよ。うう…も、もうダメぽ。
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この辺から、イ課長は3時間一本勝負の戦い方を変えることにした…せざるを得なかった。
一種の悟りを開いたと言ってもいい。

はじめから十分予想されたこととはいえ、いざルーブル美術館の中に入ると、ひたすら
「あの絵が!」「うわ!あっちにはあの絵が!」って具合に、異常なまでの名作出現頻度に
ただただ驚いては目移り、驚いては目移りっていうのを繰り返すばかり。とてもじゃないが
絵をじっくり鑑賞する精神状態になれない。何て恐ろしい美術館なんだルーブルって!

だからさ、ね?もう鑑賞しようとあせるのはやめようよ。
どっちみち3時間で全部鑑賞なんてできっこないんだし、ムリなことは素直にあきらめる。
今回は「慣れる」ことに主眼を置こう。ルーブルってのはこういう恐ろしいトコだってことを
3時間かけてカラダに覚えこませるのだ。この経験がきっと次回に生きるはず。

…と、悟りを開いてはみたものの…だ。

次回があるかどうか、わかんねぇじゃんよ(笑)。
うう…やっぱり見たいものは、今日この機会に見ておきたい。館内案内図を開き、
再びルーブルの深部に向けてセッカチに歩き始めるイ課長なのであった。

「その4」まできて、まだ終わらないこのシリーズ(笑)、一体いつまで続くんだ…?

 

by tohoiwanya | 2012-11-19 00:01 | 2011.11 欧州出張 | Comments(6)
2012年 11月 16日

夜のルーブル3時間一本勝負 その3

「その3」まで来たけど、3時間一本勝負はまだ始まったばかり。
今日はスピードあげて、いっぱい絵をご紹介するぞ。でないと、いつまでたっても終わらん。

ニケの次にイ課長が行こうとしていたところ。それは古代エジプト美術ゾーンだ。
NHKの「ルーブル美術館」ファンとして、ぜひ見たいものがあった。

エジプト美術ゾーンはギリシャ美術のエリアからけっこう離れたところにある。
だいぶ歩くなぁ…時間が惜しい。さっそく早足で歩き始めたら、横に大きな展示室があったんで、
ナニゲにチラリと視線をそっちに向けた。これがマズかった。

うわぁ!ダビッドの「ホラティウス兄弟の誓い」だ!うああ…い、いかん…見たい…
エジプト美術直行計画もどこへやら、フラフラと展示室の中に引き寄せられてしまうではないか。
早くも迷走を始めるイ課長なのである。
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ここはフランス新古典主義~ロマン主義を中心にした展示コーナーなんだね。
ダビッドはもちろん、ドラクロワ、アングルあたりの巨匠たちの作品がテンコ盛り。
自国の画家の世界的名作をギッシリ詰め込んでるわけだから、ルーブルとしても
ご自慢の展示コーナーの一つといえるだろう。

ルーブル+新古典主義+ダビッドとくれば、極めつけはやっぱこの「ナポレオンの戴冠式」だよなー。
確か中学生の時の美術の教科書にこの絵が載ってたっけ。写真が手ブレで申し訳ない。
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うわ、こっちは「レカミエ夫人の肖像」だ。左にあるダビッドの自画像も有名だよね。
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うわぁぁ、こっちにゃアングルの「グランド・オダリスク」が平然とかかってるゥ!
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ぎゃーー!ジェリコーの「メデュース号の筏」だ…本物だ、あああどうしたらいいんだ。
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20代の頃、イ課長は鎌倉の神奈川県立美術館で開催された「ジェリコー展」をなぜか
観にいってるんだよ~。あの時はこの絵のレプリカしか展示されてなくてさぁ、
「ホンモノはどんなんだろうなぁ~?」と思いを馳せたもんだったが、あれから数十年の時を経て
ついに本物を見ることができたんだよ~感激だよ~…うううう…(←泣いてる)

…と思ったら、あああ!こっちはドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」だ、も、もう許して…
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展示室のどこに視線を向けても、美術史を飾る名画たちが次々目に飛び込んでくる。
“それ一枚”が来日しただけで、日本で特別展が開催できちゃうような名作の数々が
すごい密度で、ズラズラ並んでるんだから、途中で引き返せっこないよ。
「うわ、あっちにアレが!」と思いながらどんどん展示室の奥に引き込まれちまう。

さっきエジプト美術コーナーに向かってた通路がドコだったのか、もうわからなく
なりつつあるではないか。夜のルーブル3時間一本勝負、早くもイ課長の敗色濃厚(笑)。

…と思う間もなく、イ課長はいつの間にかイタリア絵画展示室に踏み込んでいた。
なぜそれがわかったかといえば、モナリザの前の人だかりで気づいたのだ。
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うーむ…モナリザねぇ。
これが名作であることは確かだけど、「好きな絵か?」といわれるとなぁ…
特に好きってわけでもないんだよね、実は。軽くご挨拶だけして通り過ぎる。

イタリア絵画室で興味があったのは、むしろ「カナの婚礼」の方だ。
ヴェロネーゼって人が描いた作品なんだけどさ。
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新約聖書にあるキリストの奇跡とやらを、やたら大げさに描いた絵で、ハッキリ言って
芸術性はモナリザと比較にならないが、絵のデカさも逆の意味で比較にならない。
その面積66㎡、2DKのアパートってところか。とにかく大きいことで有名な絵なんだよ。
でもね、印刷でイヤってほど目にするモナリザより、こういう絵の実物を見られることが
イ課長は嬉しかったなぁ、これこそ「ルーブルに来ないと見られない絵」だもんね。

ところで写真でお気づきだと思うけど、夜のルーブル、すいてるでしょ?
混んだルーブルを知らないイ課長が言うのもヘンだけど、すいてるよ、明らかに。
モナリザ前の人だかりでもこの程度なんだから。
みなさん、ルーブルに行くんだったら水曜夜がお勧めですよーー。

ああいかん!そんなこと言ってる場合じゃないだろ!
エジプト美術ゾーンに行こうとしてたんじゃなかったのかイ課長!ばかもの!

自分自身をひっぺがすようにして、むりやりイタリア絵画展示室を後にし、
再度エジプト美術コーナーに早足で向かうイ課長なのであった。
3時間一本勝負。過酷な戦いはまだまだ続くのである。いやはや…

  

by tohoiwanya | 2012-11-16 00:23 | 2011.11 欧州出張 | Comments(8)